覚え書:「今週の本棚・新刊:『福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞』=日野行介・著」、『毎日新聞』2014年11月16日(日)付。


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今週の本棚・新刊:『福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞』=日野行介・著
毎日新聞 2014年11月16日 東京朝刊

 (岩波新書・842円)

 たとえば第二次世界大戦下の「大日本帝国」がそうだったように、国家は窮地に直面した時にその本質を露(あら)わにする。敗戦からおよそ70年後の今日、東日本大震災によって、私たちの母国・日本の地金はむき出しになりつつある。本書は原発事故被災者支援のあるべき姿と、そこから乖離(かいり)して行く政府の施策を浮き彫りにした、毎日新聞記者によるルポルタージュである。

 焦点は「子ども・被災者生活支援法」。2012年6月、議員立法によって成立した。政府は「年間累積線量20ミリシーベルト」を避難指示基準とした。それを下回る区域の避難者は「自主避難者」であり、原則として補償の対象外となる。こうした政府基準によって切り捨てられた被災者を守るために作られた法律だった。

 同法の理念を具現化するのは関係省庁、政府だ。だが理念は骨抜きにされてゆく。誰が、どの組織がそうしているのか。著者は情報公開請求を駆使した「表の取材」、さらにはキーマンに密着する「裏の取材」によって明らかにする。前著『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』と同じく、新聞記者による調査報道の役割と可能性を感じさせる。(栗)
    −−「今週の本棚・新刊:『福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞』=日野行介・著」、『毎日新聞』2014年11月16日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20141116ddm015070041000c.html






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