覚え書:「村上春樹は英語的な味わい 主要作品を英訳、ジェイ・ルービンさん講演」、『朝日新聞』2014年11月25日(日)付。

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村上春樹は英語的な味わい 主要作品を英訳、ジェイ・ルービンさん講演
2014年11月25日
 
(写真キャプション)村上春樹の英訳者として知られるハーバード大のジェイ・ルービン名誉教授=川崎市専修大
 村上春樹作品の英訳で知られる米ハーバード大のジェイ・ルービン名誉教授(73)が来日し、8日、専修大で講演。村上作品の魅力や翻訳にまつわるエピソードを語った。

 シカゴ大の学生時代に夏目漱石国木田独歩など日本近代文学に魅了され、翻訳の道に進んだというルービン名誉教授。1980年代末に『羊をめぐる冒険』が米国で話題になったことをきっかけに村上文学に興味を持ち、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を初めて読んだという。「猛烈に好きになった。『私のために書いている作家』という気持ちにさせられた」。その後、『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『1Q84』など主要作品を訳してきた。

 村上文学が世界で共感を得ていることについては、「人間の普遍的な孤独を書いているからではないか」と指摘。「日常生活にひそむミステリーを伝える能力に加え、それを支える日常生活の細部にわたった描写が的確。鉛筆削りやハンバーグステーキなど、見慣れた日常品について読者をひきつける描写ができるからこそ、読者は彼の神秘性を信じる」と語った。

 英語から強い影響を受けている村上の文体について「英語的な味わいが既にそこにあるので、英訳しやすいのはある程度本当」としながらも、「他の日本文学と同じように名詞の単数形・複数形や人称の選択はあいまいで苦労します」と明かした。

 翻訳中に村上本人ともやりとりしたが、原作者としての意見を聞くと、村上は決まって「適当にやってください」と答えたという。「しかし結局、この『適当』こそが翻訳家の仕事を全て言い表しています」とルービン名誉教授。

 「翻訳家の仕事は、自分の言葉で、『適当』と思われる手法を使って、できるかぎり原文に近い文学的経験を読者に味わってもらうこと。その過程は翻訳家の主観的なものですが、それによって何千何万という読者に、その小説以外では手の届かない世界をのぞかせることができるのではないかと思います」

 (板垣麻衣子)

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 1941年、米国生まれ。村上春樹作品のほか、夏目漱石の『三四郎』の英訳でも知られる。今年、自身初の小説を英語、日本語で刊行予定。 
    −−「村上春樹は英語的な味わい 主要作品を英訳、ジェイ・ルービンさん講演」、『朝日新聞』2014年11月25日(日)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S11473392.html





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