覚え書:「今週の本棚・新刊:『「進撃の巨人」と解剖学 その筋肉はいかに描かれたか』=布施英利・著」、『毎日新聞』2014年11月30日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『「進撃の巨人」と解剖学 その筋肉はいかに描かれたか』=布施英利・著
毎日新聞 2014年11月30日 東京朝刊

 (講談社ブルーバックス・972円)

 若者から圧倒的に支持される諫山創(いさやまはじめ)の漫画『進撃の巨人』に登場する筋肉むき出しの巨人を例にした、「美術解剖学」という聞き慣れない学問の解説書になっている。漫画はテレビアニメ化、映画化されている。

 解剖学は、医学部生の学問かと思っていたがそうではない。著者は東京藝大で学生に美術解剖学を教えてきた批評家。人体を描くのに、体の中の筋肉や骨格はどうなっているのか、知っていると知らないとでは、差が出てしまうのだという。

 目指すは、写真のようなリアルな人体ではなく、「人間としての質感、人体の存在感、重さ、そういったものから滲(にじ)み出る魅力的な人体描写」だ。巨人の描写をさまざまに駆使するものの、筋肉と骨格の説明はやや専門的で授業を受けているよう。

 読みどころは「授業」の知識を用いて『進撃の巨人』を読み解く最終章。「表情」は本来、筋肉に皮膚が引っ張られて生まれ、骨自体にはない。だが著者はある場面の巨人の頭蓋骨(とうがいこつ)には「『表情』がある」と指摘する。頭部の骨で唯一動く下顎(かがく)骨を、開いたりずらしたりして表情が生まれ、それを生み出すための表現上の工夫を解説する。(な)
    −−「今週の本棚・新刊:『「進撃の巨人」と解剖学 その筋肉はいかに描かれたか』=布施英利・著」、『毎日新聞』2014年11月30日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20141130ddm015070023000c.html






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