覚え書:「書評:原子力推進の現代史 秋元 健治 著」、『東京新聞』2014年12月07日(日)付。

2


        • -

 
原子力推進の現代史 秋元 健治 著  

2014年12月7日
 
◆危険ゆえの責任回避構造
[評者]米田綱路=書評家
 いまから六十年前の一九五四年、マグロ漁船の第五福竜丸アメリカの水爆実験によって被曝(ひばく)し、日本で反原水爆運動が強まった。同じ年、のちに首相となる中曽根康弘議員らが原子力関係予算案を国会に提出し、原子力推進の国策がスタートした。
 本書はこの六十年の原子力推進の歩みを、利益配分と利権の一大システム「原子力推進複合体」の構造分析を通じて明らかにする。「原子力ムラ」理解をさらに推し進め、原子力が本質的にもつ危険性こそが、このシステムを作り上げたとみる点が特徴的である。
 反原水爆原子力を折り合わせたのは、五三年にアイゼンハワー米大統領が打ち上げた「核(原子力)の平和利用」だった。この世界市場への原子力売り込み宣言を受けて、日本では読売新聞社主の正力松太郎が「原子力による産業革命」を掲げて国政に進出し、原子力委員会の初代委員長に就任した。正力は傘下のメディアをフル活用し、政官財学界を動員して平和利用キャンペーンを繰り広げた。彼らには、被爆国の日本こそ平和利用を目指すべきであり、それによって反原水爆運動を鎮静(ちんせい)化できるという考えがあった。
 だが平和利用の幻想は、原子力の危険性ゆえにすぐ潰(つい)える。原子力基本法の「公開・民主・自主」原則は最初から空文化し、「秘密・独占・依存」の原子力推進複合体がさらに増殖した。
 ここには利益配分の調整役はいるが司令塔がないと著者はいう。なぜなら危険性の責任など誰も負いきれないからだ。それでも原子力推進の方向性だけは揺るがないゆえ、電力会社は最初から免責され、事故が起きても国策を口実に逃げる。行き場のない放射性廃棄物が増え続け、危険性がますます高まる悪循環は、福島原発事故で私たち全てが目の当たりにしたはずだ。
 いま原発の再稼働が目前である。責任主体なき推進複合体から身を引きはがせるのは実は私たち一人ひとりだ。本書は改めてそのことを問いかける。
現代書館・3024円)
 あきもと・けんじ 日本女子大教授。著書『核燃料サイクルの闇』など。
◆もう1冊 
 和田長久著『原子力と核の時代史』(七つ森書館)。原爆開発から福島原発事故まで、原子力史と非核運動史を総覧した記録と年表。
    −−「書評:原子力推進の現代史 秋元 健治 著」、『東京新聞』2014年12月07日(日)付。

        • -


http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014120702000188.html






Resize0394