覚え書:「今週の本棚・新刊:『宗教と公共空間 見直される宗教の役割』=島薗進、磯前順一・編」、『毎日新聞』2014年12月28日(日)付。


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今週の本棚・新刊:『宗教と公共空間 見直される宗教の役割』=島薗進、磯前順一・編
毎日新聞 2014年12月28日 東京朝刊

 (東京大学出版会・4752円)

 国内外の宗教学者や社会哲学者・ハーバーマスの論文を収めた。現代社会と宗教を考えたい人に、基本的な論点を提示する。

 東日本大震災以降、宗教者の社会的な役割が注目される機会が増えた。他方、政教分離は、近代国家の大原則のはず。だからこそ、戦前の国家神道も建前上、宗教ではなかったし、戦後の靖国神社護国神社を巡る訴訟などもあり得た。また、「社会は近代化と共に世俗化し、宗教は段々と存在感を薄めてゆく」との考え方も根深い。

 だが、「無宗教」の日本人は初詣や仏式の葬儀を続け、米国大統領は聖書に手を置いて宣誓する。仏の学校では、イスラム教徒のスカーフ禁止で公的領域と信仰の自由の境界が問われた。宗教「国家」、イスラム国の動向もある。日本で「公共性」を担う宗教として、国家神道を再評価する勢力もある。政教分離や世俗化だけで問題は解けない。だからこそ、最新の議論の見取り図を描く本書は重要だろう。磯前順一による序論と1章は、現代思想の「他者論」を絡めて、著者の「熱」が伝わる筆致だ。最近の専門書には珍しい充実した読後感があった。(生)
    −−「今週の本棚・新刊:『宗教と公共空間 見直される宗教の役割』=島薗進、磯前順一・編」、『毎日新聞』2014年12月28日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20141228ddm015070047000c.html










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