覚え書:「今週の本棚・この3冊:阪神・淡路大震災20年=真山仁・選」、『毎日新聞』2015年01月18日(日)付。


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今週の本棚・この3冊:阪神・淡路大震災20年=真山仁・選
毎日新聞 2015年01月18日 東京朝刊

 <1>阪神淡路大震災ノート 語り継ぎたい。命の尊さ<新版>(住田功一著/学びリンク/1080円)

 <2>心のケア 阪神・淡路大震災から東北へ(加藤寛最相葉月著/講談社現代新書/821円)

 <3>震災と人間(黒田清著、黒田ジャーナル編著/三五館/1782円)

 今月17日で、阪神・淡路大震災(以下「阪神」)から20年が経過した。震災経験者は毎年阪神地区から減り続け、既に半数近くになっている。その一方で、東日本大震災の被災者の中には、「阪神の経験」を頼りにしている人も多い。

 『阪神淡路大震災ノート 語り継ぎたい。命の尊さ<新版>』は、神戸市の実家に帰省中に被災したNHKのキャスター住田功一氏の書だ。発災直後に全国ニュースでリポートした住田氏は、被災地を歩いて回った時の状況を生々しく記している。「あの日」起きたこと、現場で感じた思いが行間からあふれ出ている。

 また、「阪神」を過去の出来事にせず、今何をどう語り続けるべきなのかを実例を交えて具体的に提案している点が秀逸だ。さらに「阪神」での、被災地を訪れたい人へのガイドもある。

 『心のケア 阪神・淡路大震災から東北へ』は、トラウマの専門家とノンフィクションライターの対談形式で、大災害時における心のケアのポイントを分かりやすく伝えている。

 「阪神」発災直後から被災地に入り、試行錯誤の中で心のケアに取り組み、その後も神戸にとどまり全国でも珍しいトラウマの専門機関「兵庫県こころのケアセンター」センター長を務める加藤寛氏が、「被災地では、地元の医師や保健婦、看護師が主役」と繰り返しているのが印象的だ。これは、ボランティア活動にも同様に言えることだが、復興は“被災者”自らが行動しなければ、何も始まらない。

 また、被災者に対しては「向こうから話しかけるまで待ち、聴く以外何もしてはならない」という心のケアの教訓は、肝に銘じておきたい。

 最後の『震災と人間』は、今は亡き黒田清氏らしい“地を這(は)うような”視点のルポルタージュだ。ジャーナリズムが大災害にどう向き合うかを示したお手本とも言える。

 具体性を伝えるため悲惨な事実から目を逸(そ)らさない勇気、生々しい場面を劇的に切り取るセンス、そして取材対象者の言葉を生かす誠意−−という取材姿勢を徹底することで、「あの日」が20年後の今でも蘇(よみがえ)ってくる。

 悲惨な現実をまのあたりにして、感情的になったり、事実に踏み込み切れなかったマスコミ人にも読んで欲しい。

 最後に本書に書かれていた言葉が胸に突き刺さった。

 「天災は、貧しい者に襲いかかる」
    −−「今週の本棚・この3冊:阪神・淡路大震災20年=真山仁・選」、『毎日新聞』2015年01月18日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150118ddm015070025000c.html



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