覚え書:「今週の本棚・新刊:『「就活」の社会史−−大学は出たけれど…』=難波功士・著」、『毎日新聞』2015年02月15日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『「就活」の社会史−−大学は出たけれど…』=難波功士・著

毎日新聞 2015年02月15日 東京朝刊

 (祥伝社新書・972円)

 大手広告代理店での勤務経験を持つ社会学者が描いた日本の就職活動100年の歴史。自分史的な記述も含む平易な語り口ながら、膨大な資料を博捜し、豊富なデータも盛り込んだ内容は本格的な研究に基づく。

 新卒一括採用を特徴とする今のような仕組みが始まったのは大正時代初め。第一次世界大戦による好景気が背景にあったらしい。ところが大戦が終わり、1920年代に入ると様相は一変する。会社の整理・倒産が相次ぎ、当時は数少なく超エリートだった大卒者といえども就職難にあえぐことになる。

 その状況を象徴するのが小津安二郎監督の映画「大学は出たけれど」(29年)。この本では映画やテレビ番組・CMも多く参照している。ちなみに、副題にも引かれ、時代を超えた流行語となった「大学は出たけれど」のフィルムは、全70分のうち12分しか残っていないとか。

 今年も採用日程が繰り下げられたが、変更のたびに学生が振り回されてきた就職協定、「フリーター」という語が持つイメージの変遷、国際的にも特異な就職・採用システムの功罪など、就活生ならずとも考えさせられる話題が満載だ。(壱)
    −−「今週の本棚・新刊:『「就活」の社会史−−大学は出たけれど…』=難波功士・著」、『毎日新聞』2015年02月15日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150215ddm015070015000c.html


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