覚え書:「今週の本棚・本と人:『空海 千二百年の輝き』 著者・永坂嘉光さん」、『毎日新聞』2015年02月15日(日)付。

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今週の本棚・本と人:『空海 千二百年の輝き』 著者・永坂嘉光さん

毎日新聞 2015年02月15日 東京朝刊

 (小学館・5万4000円)
 ◇大師の足跡、思想を表す 永坂嘉光(ながさか・よしみつ)さん

 今年は、弘法大師空海高野山密教道場を開いて1200年目。記念の年に合わせ、A3判、高精細カラー図版160ページの超豪華写真集が刊行された。著者は学生時代から40年余、当地を撮ってきた写真家だ。

 生まれ育ったのも和歌山の高野山空海は「意識することもないほど」の身近な存在だったという。大阪芸術大在学時の恩師、岩宮武二から「1年撮り続けたら写真集になるよ」と言われ、春夏秋冬を追いかけてみた。その美しさを再認識しただけでなく、次第に「空海がどういう場所を経て、ここ(高野山)にたどりついたのだろうか、という疑問が生じました」。

 そして、奈良・吉野や京都の高雄山神護寺、果ては中国などへ赴く取材が始まった。空海が目にしたであろう日本の山々、守られてきた秘仏や宗教行事をとらえた本書は、40年かけて各社寺と信頼関係を培ってきた著者の足跡でもある。

 意識してきたのは「記録性とアート性」。感動できるシーンを探し、同じ所に何度も足を運んだ。「高野山三宝院の弘法大師像は、20回ほど通いました。次第に、勉強する空海=夜更かし、というイメージを得て、夜更けにろうそくの火を手前にともして撮りました」。1200年前の空海が、写真集を通して現代によみがえる。

 自然と、秘仏を組み合わせた編集がいい。これも、単なる美的センスではない。「空海の精神性を表したい」という明確な意思があったと話す。「吉野の金峯山寺(きんぷせんじ)の蔵王権現像と桜の風景を見開きにしたのは、吉野が桜の山となった由来とつながっているからです」。かすみ、もやは、1200年の歴史を表すのに効果的だ。

 それにしても、出版不況のご時世に5万円超の大判写真集とは、危険な冒険だったのでは?

 「大判でなければ伝わらないことがあるんです。この体裁によって、写真の良さを再認識していただけると信じています」。出版社に苦労を負わせるだけでなく、自ら協賛金集めにも奔走した。

 高野山や吉野を実際に歩いたとしても目にできない、空海の思想に近づけた気がした。<文・岸桂子 写真・森田剛史>
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空海 千二百年の輝き
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