日記:三谷太一郎「吉野作造記念館開館20周年によせて」
吉野作造記念館様から『吉野作造記念館20年のあゆみ』(大崎市教育委員会)を頂戴しました。
ありがとうございます。
「吉野作造記念館開館20周年によせて」を三谷太一郎先生が寄せています。短い文章ですが吉野作造の吉野作造である所以をズバリ言及されておりますので、ちょいとご紹介します。
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吉野作造記念館開館20周年によせて
吉野作造は、既に日本政治史および日本政治思想史に確固たる永続的な地位を占めている。そのことについては、政治的立場の違いをこえて、何人も異論がないであろう。一世紀近く前に吉野が唱えた「民本主義」は日本的デモクラシーの本質を明らかにしたものであり、具体的妥当性をもつとともに、それは少数説であったが、今や日本の政治体制の理念的基礎をなしている。おそらく吉野作造は、明治期において福沢諭吉が果たしたオピニオン・リーダーとしての歴史的役割を大正・昭和期において継承したというべきであろう。
それだけではない。吉野の思想的影響は今や国際的に広がっている。日韓および日中両国の歴史認識をめぐる深刻な対立を生み出している昨今の状況においても、ほとんど一世紀を遡る吉野の植民地統治批判や対中外交批判が対立している双方の側で顧みられ、その先見性が再認識されるとともに、双方の対話の出発点となっている。
「民本主義」は決して過去の遺物ではなく、今日を導く指針である。しかもそれは日本一国に特有なものではなく、国際的な通有性をもっている。吉野作造記念館の20年の事業は、そのことを明らかにしている。
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