覚え書:「今週の本棚・新刊:『大津波のあとの生きものたち』=永幡嘉之・著」、『毎日新聞』2015年02月22日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『大津波のあとの生きものたち』=永幡嘉之・著
毎日新聞 2015年02月22日 東京朝刊

 (少年写真新聞社・1512円)

 東日本大震災直後の生態環境が破壊された時から、さまざまな生き物の生命が力強く回復していく姿を撮り続けた写真集。半年後から生物が増え始め、2年目には震災前より多くの生物が姿を見せた。震災からの復興を写し取った本かと思いきや、著者はこうした光景が「長くは続かなかった」と嘆く。

 理由は、堤防や水路が造り直され、生命を育んだ環境が破壊されたこと。「さざ波が立つほど」メダカが泳ぎ回っていた池は埋め立てられて畑になり、アカテガニが行き来する森と砂浜が堤防で分断された。ミズアオイが咲き誇った湿地も埋められ、防砂林になっていく。工事が急ピッチで進められ、動植物の姿がどんどん消えていった。

 さまざまな生物が共存し、持続的に恵みを享受できる環境づくりを目指す「生物多様性」。2010年に名古屋で国際会議も開かれ、建築工事でも生物のすみかや行動ルートを確保する工法を採るケースが増えている。被災地の復興も安全な暮らしの確保も大事だが、それでも著者はあえて訴える。「自然豊かな海辺を、そのまま未来に残す知恵は、本当になかったのでしょうか」と。(山)
    −−「今週の本棚・新刊:『大津波のあとの生きものたち』=永幡嘉之・著」、『毎日新聞』2015年02月22日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150222ddm015070071000c.html










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