覚え書:「今週の本棚・新刊:『公共圏に挑戦する宗教』=ユルゲン・ハーバーマスほか著」、『毎日新聞』2015年03月29日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『公共圏に挑戦する宗教』=ユルゲン・ハーバーマスほか著
毎日新聞 2015年03月29日 東京朝刊

 ◇ユルゲン・ハーバーマス、チャールズ・テイラー、ジュディス・バトラー、コーネル・ウェスト著

 (岩波書店・2700円)

 ハーバーマスやバトラーら、現代欧米を代表するリベラルな知識人たちが、社会と宗教を討論したシンポジウムの記録。特に、近年のハーバーマスの問題意識などをコンパクトに知ることができる。

 一般に、民主主義を支える市民が自由に討議して合意する場、公共圏についての議論から、宗教は排除されてきたとされる。社会の進歩は世俗化、つまり脱宗教化を伴うと考えられてきた。しかし近年、イスラムキリスト教原理主義は影響力を増している。そもそも、本書のシンポジウムが開かれた米国は、政教分離を掲げつつも、基盤にキリスト教が強くある国だ。たとえば、人種差別はキリスト教に基づいて肯定も否定もされてきた。バトラーはユダヤ教徒で、論者の一人、ウェストは牧師である。彼らは、宗教性を民主主義にいわば寄与させる道を探り、公共圏と宗教の極端な二分法を越えようとする。

 以前本欄で紹介した『宗教と公共空間』(島薗進、磯前順一編、東京大学出版会)と合わせて読みたい。=箱田徹、金城美幸訳(生)
    −−「今週の本棚・新刊:『公共圏に挑戦する宗教』=ユルゲン・ハーバーマスほか著」、『毎日新聞』2015年03月29日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150329ddm015070036000c.html



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公共圏に挑戦する宗教――ポスト世俗化時代における共棲のために
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