覚え書:「Listening:<国会での発言の自由>「戦争法案」の発言 自民が反発、騒動に」、『毎日新聞』2015年05月04日(火)付。

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Listening:<国会での発言の自由>「戦争法案」の発言 自民が反発、騒動に
2015年05月04日

(写真キャプション)参院予算委で福島瑞穂氏の質問に答える安倍晋三首相=国会内で2015年4月1日、藤井太郎撮影


Listening――あなたの声を聞きたい
「戦争法案」の発言 自民が反発、騒動に−識者の話
 国会で発言の自由はどこまで認められるのか−−。今国会に提出予定の安全保障関連法案を巡り、参院で野党議員が「戦争法案」と呼ぶなどして質問したことに関し、自民党側が「不適切な言辞」と反発、議事録掲載にあたって発言の修正を求める騒ぎがあった。憲法は国会議員に対し、院内の発言について院外で責任を問われない「免責特権」を与えている。自民党側は要求を取り下げたが、騒動は今後も尾を引きそうだ。【青島顕】

 ◇「不適切」と修正求め

 「安倍内閣は14本から18本以上の戦争法案を出すと言われています」。4月1日の参院予算委員会福島瑞穂氏(社民)が質問した。すると即座に、岸宏一委員長(自民)が「不適切と認められるような言辞があったように思われる」と指摘した。これを受け自民党理事が17日、「戦争関連法案」「戦争につながる法案」への発言修正を求めた。

 3月20日の参院予算委でも同様の問題が起きた。小西洋之氏(民主)が安保法制に関する質問で「外務官僚を中心とした狂信的な官僚集団」と発言した。自民党の岡田広理事が「不適切な言辞」と指摘し、4月に入って別の自民党理事が発言の修正か削除を求めた。

 衆参両院の規則はいずれも、委員会での発言について「委員会の秩序をみだし又(また)は議院の品位を傷つけるときは、委員長は発言を取り消させる」としている。

 発言の議事録削除は通常、委員会理事の合意を受けて行ったり、委員長が職権で実施したりする。今回はこうした場合と違い、議員本人に自発的な発言の修正を促そうとしたようだ。

 福島、小西両氏は発言の修正に応じなかったため、3月20日と4月1日の議事録が確定せずに公開されない状態が続いた。最終的に4月28日になって、岸委員長が両氏の発言を修正せずに公開することを決めた。

 岸委員長は取材に「2人の発言はレッテル貼りで、ちょっと常識的でないと思ったが、(議事録に)載せる載せないとか決めつけていない。議員を萎縮させることはないと思う」と説明した。自民党の対応については「(安倍晋三首相の意向の)そんたくはない」と述べた。

 ◇過去にも使用

 1999年、共産党議員が当時審議されていた周辺事態法案について、20回以上「戦争法案」と呼んで質問した。

 これに対し小渕恵三首相(当時)は同年3月26日の衆院特別委員会で「従来の共産党のご意見をずっと聞いておりますと、これ(共産党の意見)が戦争法案というような感じがいたしておりまして、むしろ平和確保法案というのがこの法案(周辺事態法案)であることを、はっきり国民の前に申し上げたいと思います」と答弁した。いずれの発言も議事録にはそのまま掲載された。

 福島氏は今回の騒動に先立つ今年2月3日の参院予算委で「5月に安全保障法制についての法案、私は戦争法案と言っておりますが、出てくると言われております」と質問している。しかし、この際は発言がそのまま議事録に載った。自民党の要求に対し福島氏は「ここで使うのをやめたら、この言葉が使えなくなる。言葉が奪われかねない」と話した。

 一方、小西氏は毎日新聞の取材に「過去の議事録に『狂信的』という言葉があるのを確認した上で質問した。危機的な状況を伝えようとすれば、踏み込んだ言葉を使わざるを得ない」と主張した。さらに「このままでは、多数派が気にくわない言葉にレッテルを貼って、国会での発言を萎縮させることになりかねない。私自身、指摘を受けて悩み、別の委員会での発言が慎重になってしまった時期がある」と明かした。

 ◇失言・暴言で削除

 衆参両院での発言が議事録から削除されたり、修正されたりしたケースは過去にある。失言・暴言が多いが、政治的な立場の異なるテーマについての発言が問題視されたこともあった。

 2010年11月、仙谷由人官房長官(当時)が衆院予算委で持参した資料を報道機関のカメラマンに撮影され「盗撮された」と発言したが、問題視されて「撮影」に修正した。

 08年2月の衆院予算委では、町村信孝官房長官(同)が「某党の某代表が政党を解散した時、お金がどこかに行ってしまった」と発言した。身内の与党側から「行き過ぎだ」と議事録削除を提案される異例の展開の末、町村氏は「訂正したい」と表明し、発言は削除された。

 07年10月の衆院厚生労働委員会では、長妻昭氏(民主)が「与党というものは一度でも(政府の)不祥事を追及したことがあるのか」と与党を批判し、茂木敏充委員長(自民、当時)の職権で議事録から削除されたことがある。

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 ◇小西洋之氏の3月20日の質問要旨

 (集団的自衛権行使を容認した昨年7月の閣議決定について)憲法を何も分からない安倍総理と、それを支える外務官僚を中心とした狂信的な官僚集団がこういうことをやっているんです。

 ◇福島瑞穂氏の4月1日の質問と安倍晋三首相の答弁の要旨

 福島氏 安倍内閣は5月15日、14本から18本以上の戦争法案を出すと言われています。集団的自衛権の行使や、それから後方支援という名の下に戦場の隣で武器弾薬を提供する、このことを認めようとしています。

 安倍首相 今も我々が今進めている安保法制について、戦争法案というのは我々もこれは甘受できないですよ。そういう名前を付けて、レッテルを貼って、議論を矮小(わいしょう)化していくということは断じて我々も甘受できないと考えているわけでありまして、真面目に福島さんも議論をしていただきたい。

 福島氏 戦争法案、これは集団的自衛権の行使を認め、後方支援という名の下にまさに武器弾薬を提供するわけですから、戦争ができることになる。これを戦争法案、戦争ができるようになる法案ですから、そのとおりです。
    −−「Listening:<国会での発言の自由>「戦争法案」の発言 自民が反発、騒動に」、『毎日新聞』2015年05月04日(火)付。

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