覚え書:「日韓中台の影響たどる カントの平和論 法大・牧野教授ら共同執筆 3カ国語で出版へ」、『東京新聞』2015年05月13日(水)付。

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日韓中台の影響たどる カントの平和論 法大・牧野教授ら共同執筆 3カ国語で出版へ

2015年05月13日


(写真キャプション)東アジアのカント研究について話す法政大の牧野英二教授=東京都千代田区

 「永遠平和のために」などの著作で知られるドイツの哲学者、イマニュエル・カント(1724〜1804年)の思想を東アジアの国々が、どう受け入れてきたのかをたどった本が出版された。今年は戦後70年。日本と韓国、中国、台湾の一線の研究者が共同のテーマに取り組むことで、学問の世界での「国境」を低くする狙いも込められている。 (五味洋治)
 この本は「東アジアのカント哲学 日韓中台における影響作用史」(法政大学出版局)。韓国語はすでに刊行され、中国語もまもなく出版される。
 カント哲学が専門の牧野英二・法政大文学部教授が、六年かけて知人の研究者に呼びかけ、それぞれの国が、西洋哲学の要と言われるカントの思想をどう受容してきたかについて寄稿してもらった。
 筆者は牧野氏のほか、国立ソウル大学や国立台湾大学、中国人民大学に勤務する一方、カント全集の翻訳などに当たった専門家計五人だ。
 日本では、明治時代初期からカントの平和論に注目が集まり、著作の多くが翻訳され、研究者の間で論争も起きた。自由民権思想家の中江兆民はカントから大きな影響を受けている。
 韓国や中国、台湾は、日本語訳を通じてカント哲学の主要な概念や用語を知った。韓国では、道徳や良心の重要性を説くカントに儒教との共通項を見つけ、積極的に受け入れた。
 中国では一九六六年から十年間続いた文化大革命で、カント哲学の翻訳や研究は停滞したが、改革開放路線の定着で、研究が盛んになっているという。
 編者である牧野教授は「漢字文化の恩恵を受けてきた東アジアの国々に、カントを通じて学問的、人的交流を広げてきた歴史があることを再確認できた。研究者同士の気持ちが通じ合ったことは、日中韓の間で政治的な緊張関係が続いている中だけに意義がある」と成果を語った。
    −−「日韓中台の影響たどる カントの平和論 法大・牧野教授ら共同執筆 3カ国語で出版へ」、『東京新聞』2015年05月13日(水)付。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/20150513/CK2015051302000181.html





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