覚え書:「今週の本棚・新刊:『和合亮一が語る福島』=鈴木康史・編』=浅田正彦・著」、『毎日新聞』2015年05月24日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『和合亮一が語る福島』=鈴木康史・編
毎日新聞 2015年05月24日 東京朝刊

 (かもがわ出版・1728円)

 福島の高校教員で、東日本大震災直後からツイッターで発信した『詩の礫(つぶて)』が反響を呼んだ詩人の和合亮一氏は2013年7月、奈良女子大学文学部に招かれて講演を行った。講演の前には女子学生ら数人からインタビューも受けた。さらに翌14年10月、今度は女子学生3人と准教授の鈴木氏が福島を訪ね、和合氏の案内で被災地を歩いた。それらの記録をまとめたもの。

 震災と原発事故がもたらした現在も進行中の深刻な事態は、被災地から遠い場所で学ぶ若者には自分の問題として意識しにくい。和合氏はその隔たりに、言葉の力で「橋を架けたい」と語る。学生たちの受け止め方は率直かつ柔軟。和合氏も彼女らとのやり取りを「心の風通しの良い場」と捉え、自然体で臨んでいる。

 訪問先でも学生には身構えた姿勢がないため、かえって原発を抱える福島の状況が切々と伝わる。南相馬市の小高駅前で偶然出会った地元住民たちの言葉は、さりげなくも鮮烈に若い心に突き刺さる。

 「昔から人のやってない新しい詩を書こうとして戦っている」など、和合氏の詩作にかける思いも吐露されている。(壱)
    −−「今週の本棚・新刊:『和合亮一が語る福島』=鈴木康史・編』=浅田正彦・著」、『毎日新聞』2015年05月24日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150524ddm015070008000c.html








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