覚え書:「今週の本棚・新刊:『革命前夜』=須賀しのぶ・著」、『毎日新聞』2015年05月24日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『革命前夜』=須賀しのぶ・著
毎日新聞 2015年05月24日 東京朝刊

 (文藝春秋・1998円)

 クラシック音楽はとんとわからない。それでも響き渡るオルガンや重厚なバイオリンが読み終えてなお耳の奥で鳴っていた。念のために本書に登場する曲をいくつか聞いてみたのだが、小説世界が作り出したイメージそのまま。音は演奏できない文字表現で、音楽と物語がここまで一体化するかと驚いた。

 タイトル通り、ベルリンの壁が崩壊する前夜の東ドイツが舞台。眞山柊史(まやましゅうじ)はバブル期の日本から、ドレスデン音楽大学にやって来た。ハンガリーベトナム北朝鮮など東側の留学生の中、ただ一人の西側留学生だ。自らの音を見失いそうになりながら、ある日教会で一人のオルガニストの演奏に心揺さぶられる。しかし彼女はシュタージ(国家保安省)に監視されていた。

 音大生たちのつばぜり合い、抑圧された人々の生活や、抵抗の動き。そんな状況でいや応なく自分と向き合っていく眞山の成長。それやこれやがない交ぜになって、歴史の奔流にのみ込まれていく。しかも、それらを眞山の日々の暮らしで起きた出来事という低い視線でつづっていることで、混沌(こんとん)とした緊迫感が全編を覆う。(無)
    −−「今週の本棚・新刊:『革命前夜』=須賀しのぶ・著」、『毎日新聞』2015年05月24日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150524ddm015070010000c.html








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