覚え書:「今週の本棚・新刊:『愛猿奇縁 猿まわし復活の旅』=村崎修二・編著」、『毎日新聞』2015年05月24日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『愛猿奇縁 猿まわし復活の旅』=村崎修二・編著
毎日新聞 2015年05月24日 東京朝刊
(解放出版社・1944円)
猿まわしは、商業施設や地域のイベントなどでよく目にし、日光猿軍団などメディアでの露出も多い。この大道芸が、たった約50年前に絶滅寸前だったことも、山口県の被差別部落が中心地だったことも、一般には知られていないだろう。編著者は、復活を中心で担った人物だ。本書は、猿まわし復活を応援してきた小沢昭一や高石ともやら、各界の人物との対談を中心にまとめた。
鎌倉時代に最古の文献記録が残る猿まわしは、元々、呪術的意味があったとか。他の放浪芸と同様、下層民の生業(なりわい)となる一方、大名が移封(いほう)の際に猿まわし集団を連れて行ったとの記録もある。近世は甲州が多く、江戸・東京にも猿まわし集団がいて、全国を回った。近代以降に山口が全国制覇するが、戦後、娯楽の多様化や担い手不足で衰退。当地で部落解放運動をしていた編著者らが1970年代に復活させた。小沢の他、宮本常一、今西錦司、網野善彦、司馬遼太郎ら多数が、民俗学や歴史学、生態学などの立場で支援してきた。
戦後日本の「知」が現場と切り結び豊かな成果を上げた、その良き時代の記録としても、大変貴重な一冊と言えよう。(生)
−−「今週の本棚・新刊:『愛猿奇縁 猿まわし復活の旅』=村崎修二・編著」、『毎日新聞』2015年05月24日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20150524ddm015070026000c.html