覚え書:「今週の本棚・新刊:『止まり木ブルース 2014』=塩崎利雄・著」、『毎日新聞』2015年06月21日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『止まり木ブルース 2014』=塩崎利雄・著
毎日新聞 2015年06月21日 東京朝刊
(UMAJIN・1620円)
『日刊ゲンダイ』土曜日連載の競馬同時進行短編読物の昨年分集成本。“限りなくヤクザに近いカタギ”の風評ある品川の健坊だが、彼ととりまき連がスナック「再会」を舞台にくりひろげる裏街道物語は馬券でやられっぱなしの競馬ファンにはどこか慰めになる。「人を騙(だま)したことはない」は健坊の口癖だが、金を借りて約束どおり返さなくても「最初から意図していたわけではない」という屁(へ)理屈がまかり通るらしい。その健坊が競馬にはしょっちゅう騙されているとのボヤキがただよってくる。本命大好き人間だから、たまに的中しても高配当にありつけない。
ところが、秋の天皇賞では1番人気イスラボニータの軸1頭で3連単(1・2・3着を正確に当てる)60点の馬券を買う。レース前日までは「ウスラ」ボニータにならないでくれと懇願していたせいか、同馬が3着になり232倍の高配当を獲(と)った。翌週の場面では健坊は威張ることしきりで勝てば官軍様だったらしい。
かつて文豪ヘミングウェイは競馬予想はどんな推理小説より面白いと言ったとか。結果もわかってから読むのだから、塩崎ブルースはどんな推理小説より味わい深い。(凌)
−−「今週の本棚・新刊:『止まり木ブルース 2014』=塩崎利雄・著」、『毎日新聞』2015年06月21日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20150621ddm015070037000c.html