覚え書:「今週の本棚・新刊:『幕末の奇跡 <黒船>を造ったサムライたち』=松尾龍之介・著」、『毎日新聞』2015年07月12日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『幕末の奇跡 <黒船>を造ったサムライたち』=松尾龍之介・著
毎日新聞 2015年07月12日 東京朝刊

 (弦書房・2376円)

 19世紀の世界の貿易、外交を塗り替えたのは蒸気船の発達だった。その波は鎖国を続けてきた日本にも押し寄せ、江戸幕府の開国、薩長の武力増強、明治維新へとつながる。そこで、「蒸気船」をキーワードに幕末を読み解いたのが本書である。江戸幕府が威信をかけて長崎に創設した「海軍伝習所」と、そこにかかわった人々の生涯を掘り下げていく。

 ペリー来航時の若き老中首座・阿部正弘から、伝習所1期の艦長要員・勝麟太郎(後の勝海舟)、幕府海軍創立の真の立役者とされる木村摂津守喜毅(よしたけ)や、浦賀奉行所の与力でペリー来航時に最初に軍艦に乗り込み、最期は函館で幕府軍と運命をともにした中島三郎助、毎日新聞の前身である東京日日新聞主筆兼社長となった福地源一郎など、時代の懸け橋となった人物のエピソードが盛り込まれている。その歩みをたどると、結果的には薩長の軍門にくだったものの、江戸幕府の懸命な蒸気船開発への取り組みが維新後の急速な富国強兵につながったことが分かる。

 巻末には伝習所1〜3期生とオランダ人教師団、佐賀藩をはじめとする各藩から派遣された伝習生たちの名簿も収録している。(木)
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http://mainichi.jp/shimen/news/20150712ddm015070053000c.html








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幕末の奇跡 《「黒船」を造ったサムライたち》
松尾 龍之介
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