覚え書:「ブックウオッチング:街の本屋さん 番外編 トークショー「戦争を考えよう」」、『毎日新聞』2015年08月19日(水)付。

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ブックウオッチング:街の本屋さん 番外編 トークショー「戦争を考えよう」
毎日新聞 2015年08月19日 東京朝刊


 ◇「戦後70年」伝えるために

 毎日新聞社とTBSテレビが戦争体験者や遺族から証言を集める「千の証言」プロジェクトと、日本雑誌協会が取り組む「マガフェス 戦争を考えよう」が共催するトークショー「戦争を考えよう」が7月28日、東京都千代田区であった。「マガフェス」は戦後70年企画を掲載する18社31誌が参加し、今月末まで全国約1300書店で展開するフェア。トークショーでは4誌の編集長が「戦後70年」企画について約150人の聴衆を前に語り合った。

 司会 自己紹介と雑誌の概要、「千の証言」への感想があれば。

 石井 歴史が好きで、気づいたら編集長。「歴史読本」では定期的に戦争特集をしてきた。表現は時代によって変わってきたが厳選して届けてきた。「千の証言」はタイトルが良い。人類は多くの戦争をしてきたが、やっとここにきて一般の証言を集めることができるようになったのかなと思う。

 潟永 長崎に勤務したとき、生け垣に立ち小便した息子が、お年寄りにしかられた。笑って話を聞いたが、後日、妻が別のお年寄りからこう聞いた。「あの日、爆心地に近かったこの辺りは、至る所に遺体が倒れていた。それを知る人にはすべてが墓所なの」と。自分が恥ずかしくなった。語り継ぐ、とはまず人の痛みを知ることだと、記者人生の転機になった。

 中田 プレジデント社から始まり35年間、雑誌一筋でやってきた。同社で戦後50年特集を作ったが、戦後80年も何か作りたい。10年後に「戦後5年」なんて事態になっていないことを祈るが。

 浜田 戦争は今も世界では終わっていないと考えている。9・11の米同時多発テロで現地入りし、ニューヨークの街中に戦車が並ぶのを見た。2003年のイラク戦争ではヨルダンを拠点に取材をした。東日本大震災で100人の証言を集めたが100、1000と集めることでパズルを組み合わせるように見えてくるものがある。

 司会 今回のマガフェスに出している雑誌の売りの部分は。

 石井 「歴史読本」夏号。タイトルは「太平洋戦争1347日の激闘 日本人はいかに戦ったか」。テーマは約1年前から練ってきた。戦争を取り上げるといっても戦闘、戦争に至った経緯、政治、暮らしと多岐にわたる。うちの読者は戦史が好きなので、戦史の小さな疑問に答えた。たとえば「インパール作戦」は知っていても細部は知らないという疑問を掘り下げた。その結果、「部下は絶対に死なせない」といった日本人の誇り高さを示す事実が見えてきた。

 潟永 「サンデー毎日が伝えた一億人の戦後70年」というムック。サンデー毎日が70年間に伝えたことを集大成した。1945年からいきなり2015年になったわけではない。その間に復興があり、集団就職があり、大学紛争もあった。孫の世代と「こんなことがあったんだよ」と話せる誌面にした。

 中田 30年前に発行され、今も読み継がれる「失敗の本質」。経営学者の野中郁次郎先生らが経営学的に日本軍の敗因を研究した書だ。明治以降のこの140年間の前半70年は、日本は絶えず戦争をしてきた。その背景を分析し、戦後70年の平和の意味を問うた。「決断の本質 日本人の戦争と平和」というムックだ。

 浜田 「佐藤優特別編集長号 終わらない戦後」。元外務省の佐藤さんを編集長に、歴史修正主義はなぜ生まれたのか、リベラルはなぜ退潮したのか、教科書問題とは何か、ネトウヨの思想と行動などを取り上げた。今の問題を戦後といった視点で読み解いた。

 司会 どうやったら戦争の経験を語り継げるか。雑誌の工夫は。

 浜田 一方通行を避けるため、小島慶子さんに中学校で平和を考える授業をしてもらい、中学生の反響も含めて掲載した。あったことを伝えるだけのメディアになりたくない。佐藤さんにも「戦争と戦後を知る102冊」を選んでもらった。読者が能動的に戦争を知ろうとするきっかけにしてほしい。

 中田 「戦争を知らない子供たち」という歌があったが、今は「戦争を知らない大人たち」の時代。戦後50年の時は昭和一桁や大正生まれがいて経験が語れたのに。それを解消しようと文字はかなり詰め込んだ。ただ表紙は漫画。意表を突く感じで目を引きたい。教科書を作るつもりで作った。

 潟永 夏休みで孫が帰って来る。お年寄りは若い世代と断絶があると感じるかもしれないが、皆さんも若かったのだ。それを思い出して子や孫と話をしてほしい。

 石井 歴史に特化し、思想は入れず淡々と書く。著者の意見も抑えてもらった。

 司会 最後にTBSの大野さん。編集長の発言を踏まえて。

 大野 テレビも若い人の声を積極的に取っていきたい。テレビは「きっかけのメディア」だと考える。テレビで何か気づいたこと、引っかかることがあったら、新聞、雑誌を手にとってもらえればと思う。【須藤晃、写真は竹内紀臣】=敬称略

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 ◆パネリスト

 ◇石井久恵さん

 KADOKAWA歴史読本編集長

 ◇潟永秀一郎さん

 毎日新聞出版サンデー毎日編集長

 ◇中田雅久さん

 ダイヤモンド社クロスメディア事業局局次長

 ◇浜田敬子さん

 朝日新聞出版アエラ編集部編集長

 ◇大野慎二郎さん

 TBSテレビニュース23ディレクター

 司会は毎日新聞編集委員、砂間裕之

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 @現場は休みました。
    −−「ブックウオッチング:街の本屋さん 番外編 トークショー「戦争を考えよう」」、『毎日新聞』2015年08月19日(水)付。

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