覚え書:「今週の本棚・本と人:『子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち』 著者・黒川祥子さん」、『毎日新聞』2015年09月06日(日)付。

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今週の本棚・本と人:『子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち』 著者・黒川祥子さん
毎日新聞 2015年09月06日 東京朝刊


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 (集英社・1728円)

 ◇医療問題よりむしろ社会問題 黒川祥子さん(くろかわ・しょうこ)

 親から虐待を受けた子供たちの後遺症に焦点を当てた『誕生日を知らない女の子 虐待−−その後の子どもたち』(集英社)で開高健ノンフィクション賞を受賞するなど、家族問題をテーマに取材を続けてきた。

 子宮頸(けい)がんワクチンは、2010年11月の国の補正予算で公費負担が始まり、13年4月から定期接種化された。対象は小6から高1の女子。接種後に記憶障害やけいれんなどを起こした例があることはニュースで知っていたが、畑違いの医療問題と捉えていた。しかし昨夏、出版社で編集者から「周囲から理解されず、苦しんでいる少女や母親の声が報道されていない」と声を掛けられ、専門の家族問題として一気に身近に迫った。

 被害者連絡会を通じて14−17歳の少女6人とその母親を取材した。症状が現れた時期は、接種直後から数カ月後までさまざま。意思とは関係なく手足が動く「不随意運動」が特徴的で、「両足が天井に届くかと思うぐらい高く跳ね上がる。(中略)そんな娘の胸の上あたりで馬乗りになって、のけぞり回転する身体を押さえ込む」母親の苦労もつづられる。頭をハンマーで叩(たた)かれるようなひどい頭痛や、母親すら忘れてしまう記憶障害などを自分の言葉で説明し、「詐病と言われ、友達もわかってくれない」と訴える少女に胸がつぶれ、涙を流しながらの取材を繰り返した。

 がん予防効果が証明されないまま接種を承認した厚生労働省の審議会委員と製薬会社との金のつながりも明らかにする一方で、接種を推進する専門家のインタビューも載せ、バランスを取った。正体のわからない症状に加え、周囲に理解されない母娘が二重に苦しむ現状は「医療問題よりむしろ社会問題。薬害と声高に言わず、少女たちに何が起きているか広く知ってもらいたい」との思いがあるからだ。

 厚生労働省は13年6月、接種を積極的に勧めるのをやめたが、接種は続いている。少女たちの症状は日に日に悪化し、出版の2日前、取材した少女の一人の容体が急変、全ての記憶を失ってしまった。「国のすることをうのみにしていては、いつ同じことが自分に起こるかわからない。対岸の火事では済まないことだと早く知ってもらいたい」との思いを強くした。<文と写真・丸山進>
    −−「今週の本棚・本と人:『子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち』 著者・黒川祥子さん」、『毎日新聞』2015年09月06日(日)付。

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