覚え書:「今週の本棚・新刊:『近世快人伝 頭山満から父杉山茂丸まで』=夢野久作・著」、『毎日新聞』2015年2015年10月04日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『近世快人伝 頭山満から父杉山茂丸まで』=夢野久作・著
毎日新聞 2015年10月04日 東京朝刊
(文春学藝ライブラリー・1058円)
戦前のアジア主義右翼政治団体、玄洋社を象徴する人物ら4人を奇書『ドグラ・マグラ』で知られる作家が描いた。昭和戦前期の隠れた名作を、手軽に楽しめることになった。
明治維新後の人物伝だから、題の「近世」は、今使われる時代区分としての近世ではない。にしても確かに、登場人物たちのいきの良さ、直情径行ぶりは、とてもじゃないが近代人に思えない。どの人物も、正義感と人情、肝っ玉と勢い、ついでにおとぼけが極端だ。総帥の頭山満、政界の黒幕と言われた夢野の父、杉山茂丸の二人は、重要人物だからまだよし。頭山の盟友で警察官、農園の番人をへて極貧で死んだ奈良原到、さらに博多の魚市場の大将、篠崎仁三郎に至っては、なぜ目次に並んだのか訳が分からない。なのに確かに、読めば作者が玄洋社に映した「夢」は、目の前でぱっと花開く。文体は、博多弁の講談調とでも言うべきか。気は荒くとも情に厚い、余韻を残す文章である。ついつい、音読してしまう。<チョット><イツモ>と片仮名が、文のリズムを引き締める。ひ弱で反知性の「インテリ」とは対極にある、まさしく痛快な一冊だ。(生)
−−「今週の本棚・新刊:『近世快人伝 頭山満から父杉山茂丸まで』=夢野久作・著」、『毎日新聞』2015年10月04日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20151004ddm015070026000c.html
近世快人伝 頭山満から父杉山茂丸まで (文春学藝ライブラリー)
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