覚え書:「今週の本棚・新刊:『その時、名画があった』=玉木研二・著」、『毎日新聞』2015年10月11日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『その時、名画があった』=玉木研二・著
毎日新聞 2015年10月11日 東京朝刊
(牧野出版・2376円)
映画「風と共に去りぬ」は1939(昭和14)年の製作だが、戦時下の日本では見ることができなかった。だが、日本軍が占領したシンガポールで、押収フィルムを見ることができた人がいた。慰問団で訪れた徳川夢声は、映画の素晴らしさに日本の勝利を疑い、戦記映画の撮影のため派遣された小津安二郎は撮影技術の高さに驚いたという。
何しろ「当時最新のテクニカラー」で描く「壮大な叙事詩」。「真骨頂は人間の描き方の鋭さ、深さ」という大長編である。日本で公開されたのは戦後7年を経た52年だが、朝鮮戦争特需で女性の社会進出が進む中、「スカーレットの奔放な行動力はまぶしかったかもしれない」と著者は記す。すでに原作は戦前に翻訳されていて、沖縄戦の「ひめゆり学徒隊」にそれを読んでいた女生徒がいたそうだ。
と、こんな具合に、映画を案内しながら、時代の空気や街の姿を描き、作品を楽しむためのあれこれの逸話(ここが面白い)を紹介している。
毎日新聞東京地域面の連載から107編を日本での公開年度順に収録。まさに映画を通じて昭和という時代を読む本だ。(冠)
−−「今週の本棚・新刊:『その時、名画があった』=玉木研二・著」、『毎日新聞』2015年10月11日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20151011ddm015070038000c.html