覚え書:「天声人語:国連70年の行動計画」、『朝日新聞』2015年10月27日(火)付。

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天声人語:国連70年の行動計画
2015年10月27日

 ファシズムに立ち向かったチャプリンの映画「独裁者」は製作中から脅しの手紙が舞い込んだという。しかしニューヨークで上映されると連日の大入りになる。ヒューマニズムあふれる名高い結びの演説は、多くの観衆の心を打った▼「わたしたちは、みんなおたがい助け合いたいと望んでいます。……わたしたちは、他人の不幸にログイン前の続きよってではなく、他人の幸福によって、生きたいのです」(中野好夫訳)。75年をへた今も言葉の一つひとつが胸に響く▼言葉が輝きを失わないのは、しかし、おびただしい「他人の不幸」が地上から消えていない証しでもある。1日を1・25ドル未満で暮らす極度の貧困に、今も8億を超す人があえぐ▼小学校に通えない子が5670万人。5歳までに亡くなる子は年に600万人。数字はどれも厳しい。現実を顧みるとき、市場経済のもとで「勝ち組」が華やぐ繁栄は、虚飾となって色あせる▼24日に創設70年を迎えた国連が、地球全体の発展のための新たな行動計画にのりだすという。加盟193カ国が今後15年で取り組む。道は多難でも、地球上をむしばむ貧と富、幸と不幸の落差を思えば、それを世界の強い意志とするほかはない▼〈ぶらさげて子の体重ははからるる目盛りを見つめる母のまなざし〉。国連世界食糧計画の日本大使、知花くららさんが発展途上の地で詠んだ。そのあとに、標準に満たない軽き子をおんぶして帰っていく母の姿も歌われる。情景に、チャプリンの言葉を重ねてみる。
    −−「天声人語:国連70年の行動計画」、『朝日新聞』2015年10月27日(火)付。

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http://digital.asahi.com/articles/DA3S12036578.html?rm=150





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