覚え書:「今週の本棚・新刊 『医系技官がみたフランスのエリート教育と医療行政』=入江芙美・著」、『毎日新聞』2015年11月22日(日)付。

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今週の本棚・新刊
『医系技官がみたフランスのエリート教育と医療行政』=入江芙美・著

毎日新聞2015年11月22日 東京朝刊
 
 (NTT出版・3024円)

 パリ同時多発テロに揺れるフランスとはどういう国なのか。フランスのエリート養成機関である国立行政学院(ENA)に2007年から2年間留学した著者(厚生労働省九州厚生局医事課長)が見たフランス見聞録だが、日本とは何かを再発見する比較文明論にもなっている。

 オランド大統領の出身校でもあるENAのカリキュラムは文書作成能力や交渉力など徹底的な実践重視。現役の上級国家公務員のもとでさまざまなことを体験し、卒業時には成績順に省庁やポストを選ぶ。日本では考えられないようなエリート教育ぶりが分かる。原理・原則や言葉の定義にこだわるフランス人は生活困窮者への扶助を「積極的連帯所得手当」と呼び、日本のような「保護」でなく、連帯という言葉を使う。

 本書は終末期医療などフランスの社会保障、医療制度を詳細に紹介。医療事故補償など日本が学ぶべき点も多いが、逆にだれもが容易に医療機関にかかれる日本の国民皆保険の長所も浮かび上がる。ただ、それを支えているのは日本の医療従事者の過酷な勤務。医療破綻を憂える著者は、原理・原則に立ち返るフランス人の発想に学んではと訴える。(小)
    −−「今週の本棚・新刊 『医系技官がみたフランスのエリート教育と医療行政』=入江芙美・著」、『毎日新聞』2015年11月22日(日)付。

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http://mainichi.jp/articles/20151122/ddm/015/070/027000c








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