覚え書:「【書く人】最期を支える「形」提案 『ひとり、家で穏やかに死ぬ方法』在宅ホスピス医・川越厚こうさん(68)」、『東京新聞』2015年11月29日(日)付。

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【書く人】

最期を支える「形」提案 『ひとり、家で穏やかに死ぬ方法』在宅ホスピス医・川越厚こうさん(68)

2015年11月29日
 
 一人暮らしの末期がん患者たちの自宅での最期の日々を、在宅医療の経過とともに柔らかな語り口で紹介する。「独り身は明日のわが身。特別なことでもひとごとでもありません」
 在宅医療を始めて二十六年。二〇〇〇年からは、東京都墨田区で診療所と在宅ケアを支援する多職種組織「パリアン」を設立。今までに二千人以上を見送り、この分野の教科書や問題集も出版、積極的に発言もするけん引者だ。
 末期がん患者は病院にも福祉施設にも入るのが難しい。「家で最期」を選ぶ時代から「家しかない」時代になったともいえる。一方国は在宅医療の充実を叫ぶが、独居世帯が急増し、家族の介護力を期待できないのが現状。ましてや末期がん特有の苦痛を抱えて、一人で家で最期なんて、可能なのだろうか。
 「確かに大変です」。それでもできる、と伝えたかったという。専門の医療チームが地域に出て、患者の苦痛や不安に一つ一つ応えていく。そういう信頼関係の中で残りの日々を過ごせたら、患者は人生を完成させて旅立つことができる。「医療機関にも危機感、問題意識を持ってほしいという願いを込めました。こういう形ならできるというモデル提示も含め、現場の人間が発言しないといけないと思ったんです」
 認知症もある独居女性や天涯孤独で生活保護を受給する男性などの実例も描かれる。看護師やヘルパー、近所の人も含め、どう“チーム”で支えたか、時にスリリングに、時に温かいまなざしでつづられる。
 産婦人科医としてがん免疫研究の道に進んだが、三十九歳で大腸がんに。手術と抗がん剤治療を経験し、進路を変えた。末期がん患者の在宅ケアなど考えられない時代だったが、望む患者もいた。がん専門医だった自分なら診ることができる。「がんと闘う人の気持ちもよく分かります」
 二十四時間、スタッフや患者からの電話を受ける。「家というその人そのものの場所で、僕らがその人のあるがままを受け入れていく医療をする。患者さんにも家族にも死を受け入れてもらう。生易しいことではありません。でも本人や家族と一緒に喜び悲しみを分かち合える。最終的に患者の夢、自宅での最期が実現したとき、そのやりがいは本当に大きいのです」
 主婦と生活社・一四〇四円。 (野村由美子)
    −−「【書く人】最期を支える「形」提案 『ひとり、家で穏やかに死ぬ方法』在宅ホスピス医・川越厚こうさん(68)」、『東京新聞』2015年11月29日(日)付。

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