覚え書:「今週の本棚 『京都ぎらい』=井上章一・著」、『毎日新聞』2015年11月29日(日)付。

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今週の本棚・新刊
『京都ぎらい』=井上章一・著

毎日新聞2015年11月29日

 (朝日新書・821円)

 「ほめごろし」ならぬ「けなしほめ」=京都をくさすふりをして、結局「京都はすごいだろ」と言いたいんでしょ? タイトルを見て、そう予想した。著者は建築史や風俗史で、独自の視点から快作を多数書いてきた著名人だ。京都府の人であることは、ファンの間ではまま知られている。しかし読み進めると、思い込みは外れた。文章は著者らしく軟らかい。しかし「千年の古都」とあがめられる地のいやらしい一面をえぐり出している。

 同じ京都市でも、街中である「洛中(らくちゅう)」は、その周辺である「洛外」とは、さまざまに違うらしい。後者は<京都とはみなされない>という。

 著者は嵯峨=後者で育った。観光客には人気の地域だが「洛中」中華思想をもつ前者に<田舎者よばわりをされ、さげすまれてきた>。こうした「京都人」の偉そうな物言い、腹のうちを具体例で明らかにする。

 しかしテレビや書籍などでも京都は大人気で、「洛外」の人々を誘う。そこで<あなたたちが京都に、そうやっておもねるから、洛中の人々もつけあがる>と東京のメディア批判も鋭い。ありきたりのガイドブックとは一線を画す京都案内だ。(栗)
    −−「今週の本棚 『京都ぎらい』=井上章一・著」、『毎日新聞』2015年11月29日(日)付。

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http://mainichi.jp/articles/20151129/ddm/015/070/026000c


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京都ぎらい (朝日新書)
井上章一
朝日新聞出版 (2015-09-11)
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