覚え書：「今週の本棚・新刊『無戸籍の日本人』＝井戸まさえ著」、『毎日新聞』2016年1月17日（日）付。
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今週の本棚・新刊
『無戸籍の日本人』＝井戸まさえ著
毎日新聞2016年1月17日 東京朝刊
（集英社・１８３６円）
無戸籍になる理由で最も多いのは「離婚後３００日以内に生まれた子は前夫の子」と推定する民法７７２条により、事実と異なる父の届けを強いられるためとされる。本書は、著者自身の子が一時無戸籍になったことから法改正を訴えて支援団体を作り、１３年間で１０００人超の相談に応じた体験をもとにつづられた。
学校に通えず、希望する職にも就けずに貧困に苦しむ成年無戸籍者らを中心に描いた。暴力や虐待、育児放棄、出産費用の未払いなどさまざまな事情で無戸籍になる。相談者の記憶を頼りに、親の行方や出生届確認のため過去の住居や生まれた病院探しに付き添う。しかし、長年社会から隠れるように生きてきた人たちの戸籍記載は困難を極める。
７７２条による無戸籍児が社会問題化した９年ほど前、国会で改正案提出目前まで議論が進んだが頓挫した経緯がある。著者は法相ら当時の関係者に直接取材、真相や背景にも迫った。７７２条と密接に関わる女性のみ６カ月ある再婚禁止規定（７３３条）について最高裁は先月、１００日超は違憲と判断、近く国会で議論が始まる見込み。昨年の開高健ノンフィクション賞最終候補作。（照）
−−「今週の本棚・新刊『無戸籍の日本人』＝井戸まさえ著」、『毎日新聞』2016年1月17日（日）付。
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