覚え書:「著者に会いたい:二つのコリア〔第三版〕−国際政治の中の朝鮮半島 ロバート・カーリンさん [文]坂尻信義」、『朝日新聞』2016年01月17日(日)付。

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著者に会いたい
二つのコリア〔第三版〕−国際政治の中の朝鮮半島 ロバート・カーリンさん
[文]坂尻信義  [掲載]2016年01月17日
 
■「未完の物語」を書き継ぐ意志

 1990年代の朝鮮半島核危機をはじめ、主要な米朝協議にすべて携わり、ワシントンで「北朝鮮を最もよく知る情報分析官」と目された。それでも、故ドン・オーバードーファー氏から『二つのコリア』第三版の共著を持ちかけられたときは「自分にできるのか、と迷って即答できなかった」と振り返る。
 ワシントン・ポスト紙の東京特派員や外交記者を務めた同氏が97年に世に送り出し、2001年には改訂版も出版された同著は、朝鮮半島情勢にかかわる各国の政府当局者や研究者、記者たちにとって「教科書」と呼ぶべき一冊だった。今回、21世紀に入ってからの動きを描いた最後の3章分の執筆を担当した。
 ハーバード大の大学院を卒業した1971年から米中央情報局(CIA)で18年間、国務省で13年間、アジア情報の分析にあたった。
 「北朝鮮をやらないか、と最初に打診されたとき、私は何も知らないと答えた。返事は『心配するな、誰も知らない』だった」
 北朝鮮の情報分析の先駆者で、第一人者でもある。だが、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼び、米朝協議を避けようとしたブッシュ元政権に嫌気がさして辞職した。「無用な挑発で暴走の口実を与えた。核兵器20個前後にあたる核物質を保有し、さらに増産しているだろう」とみる。
 北朝鮮への渡航歴は、30回を超える。「20年前、平壌はまるで死の街だった」。いま、車が行き交い、ビルも林立するが、見えないところで核の脅威は増幅している。
 オーバードーファー氏は、昨年7月に84歳で死去。はからずも彼の業績を引き継ぐ役が回ってきた。序文に「物語は未完」と記している。
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 菱木一美訳、共同通信社・3996円
    −−「著者に会いたい:二つのコリア〔第三版〕−国際政治の中の朝鮮半島 ロバート・カーリンさん [文]坂尻信義」、『朝日新聞』2016年01月17日(日)付。

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