覚え書：「今週の本棚・新刊 『新編 太陽の鉛筆 東松照明』＝伊藤俊治、今福龍太・編著」、『毎日新聞』2016年1月24日（日）付。
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今週の本棚・新刊
『新編 太陽の鉛筆 東松照明』＝伊藤俊治、今福龍太・編著
毎日新聞2016年1月24日 東京朝刊
（赤々舎・９７２０円）
東松照明（１９３０−２０１２年）は、戦後を代表する写真家の一人。７５年刊行の『太陽の鉛筆』が昨年末、２冊組の新編となって再び世に送り出された。編著者は美術史家の伊藤俊治と文化人類学者の今福龍太。
東松が本作でとらえたのは、琉球弧と呼ばれる沖縄の島々の自然とそこで暮らす人々。モノクロで撮影した作品を前半に掲載。さらに台湾、バリ島など東南アジアへも足を伸ばし、カラーで撮影した。当時の沖縄は本土復帰前後の激動期であったが、別の時間軸を感じさせる。
名古屋生まれの東松が沖縄を初めて訪れたのは６９年。当初は＜米軍による占領＞を主題としていたが、訪問を重ね宮古島へ移住すると、米国の影響のない世界に気づいた。あるのは＜南方要素＞の強さ。この過程を、伊藤は＜脱占領宣言であり、脱アメリカや脱日本であり、最終的には脱国家の思考実践だった＞と説く。
新編の特徴は、編者２人が初版の構成に準じた「１９７５」と共に、南方へのまなざしを引き継ぐ写真で「２０１５」を新たに編んだ点だ。国境を超越した東松の広い視野は、沖縄が政治に揺さぶられる２１世紀の今こそ再確認したい。（け）
−−「今週の本棚・新刊 『新編 太陽の鉛筆 東松照明』＝伊藤俊治、今福龍太・編著」、『毎日新聞』2016年1月24日（日）付。
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今週の本棚・新刊：『新編 太陽の鉛筆 東松照明』＝伊藤俊治、今福龍太・編著 - 毎日新聞
