覚え書:「今週の本棚・新刊 『新編 『戦後新聞広告図鑑 戦後が見える、昭和が見える』=町田忍・著」、『毎日新聞』2016年1月24日(日)付。

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今週の本棚・新刊
『戦後新聞広告図鑑 戦後が見える、昭和が見える』=町田忍・著

毎日新聞2016年1月24日 東京朝刊

カルチャー
本・書評
紙面掲載記事
 (東海教育研究所・1944円)

 ああ、懐かしの−−と思わずつぶやいてしまいそうになる、なんとも愉快な「昭和の標本箱」が登場した。虫ピンで留められたのは、終戦直後から高度経済成長が軌道に乗る前後の新聞広告だ。捕虫網を持って収集したのは庶民文化研究の第一人者とあっては、ひと味もふた味も違う「昭和カタログ」となった。

 著者の心をまず捉えたのは、敗戦から9日後の有名百貨店の広告。ヘルメットを鍋に改造するサービスを始めたことを知らせるもの。見出しがいい。「鉄兜(てつかぶと)を鍋に更生」だ。「再生」ではなく、「更生」の2文字に、平和を希求する願いが伝わる。

 1950年の「警察予備隊員募集」広告には「平和日本はあなたを求めている」の文字が躍る。庶民文化探偵は一歩踏み込む。制服のデザイナーと、「帝銀事件」犯人の似顔絵を手がけた画家が同一である可能性に言及する。そんな雑学的知識が満載だ。

 対象期間はテレビの時代が到来する1965年まで。著者が指摘するように、新聞広告の黄金時代だった。限られたスペースには時代精神のようなものも凝縮されている。本書は、新聞を対象にした研究の裾野の広がりを示唆している。(隈)
    −−「今週の本棚・新刊 『新編 『戦後新聞広告図鑑 戦後が見える、昭和が見える』=町田忍・著」、『毎日新聞』2016年1月24日(日)付。

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戦後新聞広告図鑑: 戦後が見える、昭和が見える
町田 忍
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