覚え書:「今週の本棚・新刊 『ひとと動物の絆の心理学』=中島由佳・著」、『毎日新聞』2016年1月24日(日)付。

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今週の本棚・新刊
『ひとと動物の絆の心理学』=中島由佳・著

毎日新聞2016年1月24日 東京朝刊


 (ナカニシヤ出版・1944円)

 人はなぜ、犬や猫などの動物を飼うのか。飼うとどんなメリットがあるのか。そうした疑問に心理学的な観点から明快に答えてくれる。

 いまや犬や猫の約8割は家の中で暮らす家族の一員。夫、妻、友人は、こちらが思うように愛情を注いでくれるとは限らない一方で、犬などペットは帰宅するといつも喜んで出迎えてくれる。一緒にいる心地よさ、世話をしてあげているという満足感、自分を無条件に受け入れてくれる受容感など、人が生きていくうえで必要な精神的要素をかなり満たしてくれる。

 さらに自閉症の子供たちのコミュニケーションの改善、他人への思いやりの芽生え、病後の回復などセラピストとしての役割も果たす。愛着が湧くほど別れはつらくなり、その分、看取(みと)りへの覚悟が必要になる。

 数多くの研究文献を渉猟して、人と動物の絆を解説した本は珍しい。大手前大准教授の著者は最終的に「愛着とはその動物、そのひとのために時間をかける、ということだ」という絆観に達する。心に響く名言だ。最近は学校で動物を飼う傾向が弱まっているようだが、飼うメリットを再認識してもよさそうだ。(小)
    −−「今週の本棚・新刊 『ひとと動物の絆の心理学』=中島由佳・著」、『毎日新聞』2016年1月24日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『ひとと動物の絆の心理学』=中島由佳・著 - 毎日新聞








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中島 由佳
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