覚え書:「今週の本棚・新刊 『戦後思想の再審判 丸山眞男から柄谷行人まで』=大井赤亥、大園誠、神子島健、和田悠・編」、『毎日新聞』2016年1月24日(日)付。

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今週の本棚・新刊
『戦後思想の再審判 丸山眞男から柄谷行人まで』=大井赤亥、大園誠、神子島健、和田悠・編

毎日新聞2016年1月24日 東京朝刊
 
 (法律文化社・3240円)

 戦後の主な思想家12人を、丸山眞男ら「出発点」▽吉本隆明ら「相対化」▽石牟礼道子ら「新展開」▽柄谷行人ら「現在」−−の分類で章立てして論じた。執筆陣は、ほとんどが1970年代半ば以降生まれの研究者。「ロスジェネ世代」による戦後思想論といった趣だ。各人物の思想を理解する糸口となり、それぞれの問題意識や方法論の重なりと違いが読みやすく伝わってくる。

 論じられる思想家の生年は12人中6人が20年代生まれ、「出発点」の坂本義和(27年)より「相対化」の鶴見俊輔橋川文三(共に22年)が早いなど、近くて入り組んでいる。エッセンスは、戦前からの封建遺制と資本主義や近代化とのはざまになり、戦争を生き延びた後ろめたさに、「煩悶(はんもん)」(橋川)し続けた知識人群像とでも言えようか。

 20年前に同種の本を企画したとしよう。すると、丸山らほとんどの人は、本書と似た見取り図に配置できただろう。他方で今後、たとえば柄谷を丸山の立場に置き、若い世代を配した同種の見取り図が描けるだろうか。本書の豊かさと裏腹な、「思想地図」さえ困難な現代の閉塞(へいそく)を感じざるを得ない。(生)
    −−「今週の本棚・新刊 『戦後思想の再審判 丸山眞男から柄谷行人まで』=大井赤亥、大園誠、神子島健、和田悠・編」、『毎日新聞』2016年1月24日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『戦後思想の再審判 丸山眞男から柄谷行人まで』=大井赤亥、大園誠、神子島健、和田悠・編 - 毎日新聞


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戦後思想の再審判―丸山眞男から柄谷行人まで
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