覚え書:「今週の本棚・新刊・『クラシック音楽と女性たち』=玉川裕子・編著」、『毎日新聞』2016年01月31日(日)付。

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今週の本棚・新刊
クラシック音楽と女性たち』=玉川裕子・編著

毎日新聞2016年1月31日 東京朝刊
 
 (青弓社・2160円)

 クラシック音楽における女性差別の問題は一筋縄にはいかない。日本では音大はほとんど女性が占めるし、活躍する演奏家に女性が多いのは明らかであろう。では日本では音楽において女性差別がなかったかといえば、そうではなく、クラシック音楽自体が差別され、そこに「女、子ども」が押しやられたのである。つまりこの問題を見るには、現場の実情の理解が重い意味を持つ。

 梅野りんこ、玉川裕子、西阪多恵子、辻浩美、歌川光一らの研究を編さんした本書の意義は、女性たちの音楽活動の「場」を徹底的に掘り起こす視座を得たところにある。たとえば玉川裕子の第2章「家庭に鳴り響く音楽」では、ドイツにおける「ピアノを弾く良家の子女」の思想的背景とその現実との齟齬(そご)などの経緯を探る。

 また歌川光一による第6章「女性と音楽のたしなみの日本近代」では、「妻の音楽的な趣味は夫を家庭に引きつける媚薬(びやく)」といった極論すら抱えながら、日本における「家庭の音楽」が邦楽から変化してピアノに至る経緯を跡づける。女性と音楽のかかわりを洋の東西のパラレルな視点から読み解く好著である。(古)
    −−「今週の本棚・新刊・『クラシック音楽と女性たち』=玉川裕子・編著」、『毎日新聞』2016年01月31日(日)付。

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玉川 裕子
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