覚え書:「読書日記:著者のことば 畠山健二さん」、『毎日新聞』2016年02月09日(火)付夕刊。

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読書日記
著者のことば 畠山健二さん

毎日新聞2016年2月9日 東京夕刊

 ■「本所おけら長屋」シリーズ(PHP文芸文庫・各669−670円)

身についた落語生かし

 江戸は本所亀沢町、おけら長屋の住人が織りなす泣き笑いを生き生きと紡ぐ。小説という形だが、浮かび上がるのはさながら古典落語の世界。「人も死なないし、切った張ったもない。長屋で起こるさまつなごたごたを描いている。江戸っ子特有の人情や見えっぱり、おせっかいが調味料」と語る。

 若手漫才師に台本を書いたのをきっかけに、演芸の世界に入ったのが30年前。漫才にはじまりコントや新作落語の台本、エッセーやコラムを執筆するようになった。で、小説を書いたところが結果は今一つだった。

 「このままでも何だなあ」。そんな思いを抱いているところに、知り合いの作家からアドバイスを受けた。「落語のことをあれだけ知ってるんだから、落語の小説を書いたら無敵」。そして誕生したのが、本シリーズだ。

 舞台となる本所(東京都墨田区)は自身が育ったところ。登場人物は米屋奉公人の万造、酒屋奉公人の松吉という略して「万松」のコンビに、左官八五郎、浪人の島田鉄斎、後家のお染ら、いずれもひと癖もふた癖もありそうな住人ばかりだ。

 文庫書き下ろしで1巻ごとに5−7話を収録。身についた落語が随所に生きる。「会話を多くしています。セリフで言った方が臨場感があって入りやすいかなあと思って」。展開のテンポもいい。「ダレ場を作らないように、これ以上できないくらいに凝縮して濃いものにしています。ポンと落ちて、読後感のいい終わり方にしたいと思っている。読んでいる人には、江戸っ子は粋とかオツとかって思ってもらったら、それが最大の褒め言葉。そう言われるようなものを書きたい」

 それぞれのキャラクターにファンがついているのも連作シリーズ作品ならでは。「勝手にキャラが走り出すってよく言いますけど、ホントなんだと思います」

 10巻までは続ける予定という。「書くたびに、ネタがない、ネタがないって行き詰まっています」と言いながら、3月にはシリーズ6巻目が刊行。累計18万部となる勢いだ。「あとは誰か落語家にやってほしいですね」<文・写真 濱田元子>
    −−「読書日記:著者のことば 畠山健二さん」、『毎日新聞』2016年02月09日(火)付夕刊。

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読書日記:著者のことば 畠山健二さん - 毎日新聞








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