覚え書:「今週の本棚・『千の顔をもつ英雄 〔新訳版〕 上・下』=ジョーゼフ・キャンベル著」、『毎日新聞』2016年2月14日(日)付。

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今週の本棚・新刊
『千の顔をもつ英雄 〔新訳版〕 上・下』=ジョーゼフ・キャンベル著

毎日新聞2016年2月14日 東京朝刊

 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫・各799円)

 古今東西の神話、民話に登場する「英雄」たちの冒険譚(たん)を分析した、古典的名著が新訳でよみがえった。大ヒット映画「スター・ウォーズ」シリーズの監督ジョージ・ルーカスが、本書を参考にして脚本を執筆したことで知られ、日本でもクリエーターの必読書と言われていた。

 神話学者である著者の死後10年以上がたって出された最初の邦訳は、学術書として原著に忠実なあまり一般に分かりにくいとされ、これまで本書の要約本が多数読まれてきた。今回は文庫化され、手に取りやすくなったのがうれしい。

 著者は神話を、夢と同質のもので、その象徴作用には心理学的な意味があるとする精神分析の考え方から読み解き、「英雄の旅」に共通する物語の基本構造を明らかにする。「出立」→「通過儀礼(イニシエーション)」→「帰還」を章立てし、それに伴う物語を詳説する。同様の構造をもつ映画は「ロード・オブ・ザ・リング」「マトリックス」「スタンド・バイ・ミー」など枚挙にいとまがない。

 失敗例もある豊富な事例に、個別の神話が読みたくなる。=倉田真木、斎藤静代、関根光宏訳(な)
    −−「今週の本棚・『千の顔をもつ英雄 〔新訳版〕 上・下』=ジョーゼフ・キャンベル著」、『毎日新聞』2016年2月14日(日)付。

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