覚え書:「キャンパる 全国大学生111人アンケート調査 2割が「デモに行った」、『毎日新聞』2016年02月19日(金)付夕刊。

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キャンパる
全国大学生111人アンケート調査 2割が「デモに行った」

毎日新聞2016年2月19日 東京夕刊

 「SEALDs」(シールズ)が昨年の流行語大賞にノミネートされるなど、社会現象にもなった学生デモ。当の大学生たちはデモについてどう考えているのか。キャンパる編集部のネットワークを使って全国の大学生にアンケート調査を実施、51大学の学生111人から回答を得た(文中の丸数字は学年)。【専修大・瀬戸麻理乃】

「身近に広がっている」4割

 1970年代の安保闘争以来、世間から注目が集まっている学生たちが参加するデモ。実際に学生たちはデモの広がりをどれほど感じているのか。

 まず「デモが身近にも広がっていると思うか」を理由も併せて聞いた。「はい」が44人、「いいえ」67人で、約4割の学生がデモの広がりを感じている。

 「はい」と答えた理由は、「政治の話題を話さない友達までも、SEALDsは知っていたから」(早稲田院修士(2)女)、「友人が参加している」(東京外語(4)男)、「デモに遭遇したから」(北海学園(1)男)、「同世代でデモについて話す機会が増えた」(琉球(4)女)のように、国会が近い首都圏だけでなく、全国的に身のまわりで、学生が参加するデモを見聞きする場面が多くなったことがあげられた。

 一方、「いいえ」と答えた理由は「自分があまり興味がないからか、周りにもそういう話を聞かない」(早稲田(3)男)といった意見が多かった。

「安保法案反対」が最多

 実際に大学生になってからデモに行ったことがあるかと聞くと、全体の約2割の23人が「はい」、88人が「いいえ」と回答した。

 まず、「はい」と答えた学生に何のデモに行ったのかを質問した(複数回答)。最も多かったのがSEALDs主催の安全保障関連法案反対を主張するデモ。他には原発再稼働反対、特定秘密保護法(案)反対、辺野古新基地建設反対、性的少数派の理解を広めるレインボーパレード、ヘイトスピーチに対するカウンター(対抗)デモなど多岐にわたった。

 デモに行った動機もさまざま。「あまりにも政府のしていることが許せなくて」(慶応(2)男)、「声を上げることが大事だと思ったし、一人でも参加者が多い方がいいと思った」(武蔵野(3)女)など、自らの主張を表明したいという思いを抱えて参加した人から、「安保法案が話題になっていたから」(明治(3)女)、「好奇心」(東京学芸(4)男)などと、興味本位で様子を見に足を運んだ人もいる。

 デモに参加した感想も併せて聞いた。「問題意識を持つ人が自分以外にも大勢いて、一つの問題に皆で声を上げることに感動を覚えた」(東大院修士(2)男)と一体感を感じた学生や、「意外とみんなバラバラ。デモの目的に対してはみんな賛同しているけれど、個々の思いはそれぞれだと感じた」(電気通信(4)男)と、イメージとのギャップに驚いた人もいた。

 「声を張り上げたところで、与党の圧倒的議席数の前では無力」(一橋(3)男)と、参加しながらも無力感を感じた声も聞かれた。

 「いいえ」と答えた学生に、なぜデモに行こうと思わないのか聞いた。「時間を割いてまで、声高に主張したい意見がないから」(明治学院(4)女)、「興味もないし、他のことに時間をとられている」(北海道教育(4)女)のように、関心が向かないと答える人が多かった。

 「自分の主張に合うものがない」(北海道(1)男)、「行きたいと思えるデモのやり方をしていない」(東海(4)男)と、既存のデモに賛同できないために行かないという人や、「自分が行ってもどうせ変わらないと思う」(立教(4)男)、「非効率。他にも手段がある」(東京理科(4)男)と、デモによる効果を期待できないことを理由に挙げる人も多数いた。

 他には、「友達から非難されそう」(沖縄国際(3)女)、「公務員志望だったため参加してはいけないと思った」(専修(4)男)、「政治を熱く語っているのが恥ずかしい」(中央(4)女)と、周りの目を気にして行かない、あるいは行けなかったという理由が挙げられた。「怖そうだし、あまり巻き込まれたくない」(愛媛(4)男)、「顔がネットに載り悪用されるかもしれない」(専修(4)女)と、警戒して行かない人もいた。

 関心がない人も含め、「行かなかった」人全員に、では、どんなデモなら行ったのか聞いてみた。「反対に加え、具体的にこうして問題を解決すべきだと意見も主張し、それに同意できるのであれば参加したいと思う」(中央(4)男)と、デモによる効果を実感できることの他に、「特定の社会問題を、ワークショップやデモ活動を通して学べる」(法政(3)女)、のように、デモを社会問題の学びの場とするユニークな提案もあった。

「社会変わると思う」46%

 学生デモが注目されているとはいえ、参加したことのある人はまだまだ少数派だ。多くの学生はデモの影響力についてどのように考えているのか。「デモで社会が変わると思うか」との質問に、「思う」16人(全体の14%)。「少し思う」36人(32%)と、4割以上の人がデモが社会に何かしらの変化をもたらすと考えている。一方で、「あまり思わない」41人(37%)。「全く思わない」13人(12%)と、影響力に疑問を持つ人も半数近くいる。

 今夏の参院選から18歳投票権が適用される。選挙のたびに若者の低投票率が問題視されているが、デモは社会参加を考える手段のひとつして、学生の間にも広まりつつあるのではないかと感じた。

SEALDs(シールズ)

 安全保障関連法案に反対する、首都圏の大学生を中心とする学生グループ「自由と民主主義のための学生緊急行動」の略。昨年春に結成。デモや抗議集会を主催し、ツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で呼びかけ、国会前などで活動を続けている。全国でも同様の会が結成されている。

 ■回答した学生の在籍大学(大学院を含む)

 愛知大、愛知学院大、青山学院大、茨城キリスト教大、愛媛大、岡山大、沖縄国際大、小樽商科大、香川大、神奈川大、関西大、関西学院大関東学院大、慶応大、国学院大、自由学園聖心女子大専修大創価大、大東文化大(院)、中央大、帝京大、電気通信大、東海大、東京大(院)、東京外国語大、東京学芸大、東京工科大、東京女子大東京理科大東洋大、名古屋学芸大、日本大、一橋大、フェリス女学院大、藤女子大、法政大、北星学園大、北海学園大、北海道大、北海道教育大、武蔵野大、明治大、明治学院大、明星大、桃山学院大横浜市立大、立教大、立命館大琉球大、早稲田大(院)(全51大学・50音順)
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