覚え書:「書評:[証言]日本のアングラ 西堂行人 著」、『東京新聞』2016年02月14日(日)付。
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[証言]日本のアングラ 西堂行人 著
2016年2月14日
◆根源的思考の到達点
[評者]石関善治郎=編集者
かつてアングラと呼ばれた演劇があった。暗く熱気にあふれたその舞台は、今日の演劇とは縁遠いと思われもする。が、現在の大衆文化は、演劇に限らず、この一九六〇年代後半に起きた大きな変革なくしては成り立たなかったろう。
本書はそのアングラ演劇の「時代と精神」を検証しようとする一冊だ。変革には核をなす人物がいた。寺山修司、鈴木忠志、唐十郎、佐藤信、蜷川幸雄、太田省吾ら旗手九人。うち七人との対話を中心に本書は構成される。これまでにも劇作家の個別の評伝、劇論集や発言集などはあり、著者の書も含めこの活動を扱った出版物は少なくない。
そんななか、本書の特色はアングラを綿密に時代区分した上で、(1)担い手それぞれの果たした役割を詳述し、(2)七〇年代半ば以降のアングラ演劇の変容を現代の演劇の問題として改めて提起している点だろう。著者はアングラ演劇の革命は徹底的になされたのかと疑問を呈しながらも、そこには根源的な思考と達成の高さがあったと評価し、「アングラは終わらない」と結ぶ。
九人の証言者のなかに昨年、急逝した演劇評論家・扇田昭彦の名があるのはうれしいことだ。唐十郎の紅テントの旅公演に同行取材するなど、はやくからこの運動に着目して見守り続けてきた扇田の存在はとても大きい。
(作品社・2808円)
<にしどう・こうじん> 1954年生まれ。演劇評論家。著書『演劇思想の冒険』など。
◆もう1冊
平岡正明著『アングラ機関説』(マガジン・ファイブ)。アングラをプロレタリア革命機関と定義し、表現者を紹介。
−−「書評:[証言]日本のアングラ 西堂行人 著」、『東京新聞』2016年02月14日(日)付。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2016021402000185.html