覚え書:「今週の本棚・新刊『湛山読本 いまこそ、自由主義、再興せよ。』=船橋洋一・著」、『毎日新聞』2016年02月28日(日)付。

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今週の本棚・新刊
『湛山読本 いまこそ、自由主義、再興せよ。』=船橋洋一・著

毎日新聞2016年2月28日 東京朝刊


 (東洋経済新報社・2592円)

 石橋湛山(1884−1973)は経済誌東洋経済新報』を中心にジャーナリストとして活躍した。戦後は政界に進出し、首相を務めた。本書は『石橋湛山全集』全16巻のなかから新報の社説など70本を選び、日本を代表するジャーナリストである著者が解説を加えたものだ。

 全体を貫くのは湛山の「徹底的な自由主義者」としての思想。個人の価値を大切にし、社会もそれを最大限尊重するのが湛山の自由主義だった。一方で、湛山は人間の本性が急に変わることはなく、社会制度を急に変革したところで、新たな社会が出現することはないと主張した保守主義者でもあった。著者は「湛山の保守は自由のために戦う保守」と位置づける。

 論文の多くは、満州事変や日中戦争などがあった両大戦間に書かれたものだ。国家に対する評価が急変する「国際政治の怖さ」を説き、「あいまいな道徳家」であることをいさめ、「徹底した功利主義者」であることを求める。

 テロの横行、イスラム原理主義の台頭などで自由主義が脅かされる今日、日本の針路を模索する上で、湛山の思想は示唆に富む。(古)
    −−「今週の本棚・新刊『湛山読本 いまこそ、自由主義、再興せよ。』=船橋洋一・著」、『毎日新聞』2016年02月28日(日)付。

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