覚え書:「書評:政治をみる眼 次の時代を動かす君たちへ 新藤宗幸 著」、『東京新聞』2016年03月06日(日)付。

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政治をみる眼 次の時代を動かす君たちへ 新藤宗幸 著
2016年3月6日
◆生活の場から考える
[評者]沼田良=東洋大教授
十八歳の選挙権が次の参議院選挙から実現する。国際水準に達した十八歳投票の意義は何か。初めて政治と向き合う若者を読者に想定する本書は時宜にかなった好著である。第二次安倍政権を主な素材に、今後の課題を平易に語っている。
この政権には「虚言」が目立つ、という。記憶に新しいのは、二年半前のIOC総会で首相が福島原発を「アンダーコントロール」(制御下にある)と公言したことだ。事故の惨禍を省みず、成長戦略と称して再稼働にも踏み切っている。
虚言癖は憲法問題に顕著だ。正面からの改憲(参院選?)。改正手続きなどの裏口改憲。集団的自衛権の解釈改憲(安保法制)。風向きでこの三コースを使い分ける、お手軽な場当たり路線である。
また地方創生は、言葉とは裏腹な地方切り捨ての奇策である。アベノミクスが市民生活を豊かにするとの詭弁(きべん)もある。
本書は民主政治の基本を、国と自治体との対抗関係とする。生活の場から政治を変えるには、「市民の政府」を築く必要があり、それは国政と対峙(たいじ)すべき市民自治の基盤となる制度だと締めくくる。
本来の市民の政府は広義の総称であり自治体だけをさすわけではない。ただ、二〇〇〇年に『市民の政府』を刊行するなど、その確立をライフワークとして提唱してきた評者としては、これが定番のキーワードに育ったことを嬉(うれ)しく思う。
(出版館ブック・クラブ・1728円)
<しんどう・むねゆき> 1946年生まれ。千葉大名誉教授。著書『司法官僚』など。
◆もう1冊
沼田良著『市民の政府』(公人社)。市民による新しい政府システムをつくるための視点と手法を提示する。
−−「書評:政治をみる眼 次の時代を動かす君たちへ 新藤宗幸 著」、『東京新聞』2016年03月06日(日)付。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2016030602000179.html

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