覚え書:「著者に会いたい 自分を見つめる もうひとりの自分 柳田邦男さん [文]都築和人」、『朝日新聞』2016年03月13日(日)付。

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著者に会いたい
自分を見つめる もうひとりの自分 柳田邦男さん
[文]都築和人  [掲載]2016年03月13日

柳田邦男さん(79)=都築和人撮影
 
■失った人の「いのち」を胸に

 災害や事故、難病で失われた命の現場を取材してきたノンフィクション作家にとって、愛する人を亡くして残された者がどう生きていくかは、生涯をかけて向き合わなければいけないテーマになっている。自身も次男を自死によって失った。
 「つらい立場にいる人は、長いものを読むのもつらい」と、一話が見開き2ページ、全部で33話の小さな本になったが、そこには、著者が隣で語りかけてくれるような温かみがある。
 心理学者、故河合隼雄の「人は物語らないとわからない」の言葉を支えにし、「人生は物語だ」と思ってきた。「偶然の出会いがあって恋もすれば、突拍子もない出来事も起こる。その一つ一つのエピソードを、無数の星から星座を作るようにつなげて物語にする。それによって、悲しみの意味を考え、生きる力になる」
 「人は死後も生きている」。それだけを聞くとびっくりするが、生物学的な命とは別の「精神性のいのち」があり「死後も限りなく緩やかに上昇する」。これを「死後生」と名付けた。「保育園の子どもたちを見かけると、幼い息子がいるようで『みんな幸せでな』と声をかけたくなる。すべての若者や子どもがいとおしく、これも息子が教えてくれているんだなあと思った」。愛する人を失っても魂はつながっていることを実感することで残された者は生きていく。
 文章の間の雲の写真は著者撮影。「死ぬまでにしたいこと」は、「雲の本」と「ユーモア語録」を出すこと。大ヒットした『葉っぱのフレディ』の舞台化を、87歳で企画(原案も)した104歳の医師、日野原重明さんに「柳田さんも87歳になればベストセラーが書けるから、元気でいてね」と言われたのを励みにしている。
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 佼成出版社・1296円
    −−「著者に会いたい 自分を見つめる もうひとりの自分 柳田邦男さん [文]都築和人」、『朝日新聞』2016年03月13日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/column/2016031300010.html








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