覚え書:「書評:パリ・レヴュー・インタヴューI II 青山南 編訳」、『東京新聞』2016年03月20日(日)付。

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パリ・レヴュー・インタヴューI II 青山南 編訳

2016年3月20日

◆作家の素顔と文学の本質
[評者]飯野友幸上智大教授
 「<作家への>インタヴューとは堕落した文学形式であり、その唯一の目的は、決して単純化できないものを単純化することでしかない」と、作家ポール・オースターは近作『サンセット・パーク』(邦訳未刊)のなかで登場人物に語らせている。おそらく、オースター自身の思いを語ったものだろう。とはいえ、読者が作家の胸のうちを覗(のぞ)きたいのも、また人情ではある。
 本書はアメリカの文芸誌『パリ・レヴュー』に掲載された作家インタヴューを集めたもので、性別・人種に加え、国籍も多彩な顔ぶれが二十二人登場する。Iはカポーティボルヘス、ケルアック、トニ・モリスン、アリス・マンローほか。 IIはヘミングウェイ、アップダイク、ヴォネガット、ロス、ジョン・アーヴィングなどである。
 その名のとおり、この雑誌は一九五〇年代前半にパリにいたアメリカ人作家やジャーナリストによって創刊された。第二次世界大戦前の文芸誌は思想性が強く、また文学批評が流行しはじめたこととも相まって、評論を多く載せていたが、『パリ・レヴュー』は、戦後の解放的な空気を反映してか、評論の代わりに作家へのインタヴューを掲載することに決定。
 だが、インタヴューといってもおざなりのものではなく、長いときには数年にわたって何度も話を聞きに行くという徹底ぶりで、この雑誌の目玉であり続けてきた。それゆえ一篇が長く、読みごたえ十分である。
 さて、オースターの言い分もわからないではないが、本書中のスーザン・ソンタグの発言などは、文学の本質を明かしてくれる−。「ずっと、医者になりたかった。ところが、文学に呑みこまれた。あらゆる人生を味わってみたかったのね。作家として生きるのであれば、いちばんたくさんいろんなものが味わえるだろうと思ったわけ」
 何より、本書をきっかけとして読者が実作品にあたるなら、海外文学離れの現状にとって貴重な一書となろう。
岩波書店・各3456円)
*I・ IIの表題は『作家はどうやって小説を書くのか、じっくり聞いてみよう!』と『作家はどうやって小説を書くのか、たっぷり聞いてみよう!』
◆もう1冊 
 池澤夏樹著『世界文学リミックス』(河出文庫)。個人編集で「世界文学全集」を編んだ著者が四十人の作家の名作を紹介。
    −−「書評:パリ・レヴュー・インタヴューI II 青山南 編訳」、『東京新聞』2016年03月20日(日)付。

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