日記:リベラルでない民主制は、民主制の否定であり、多かれ少なかれ独裁的性格を帯びる。民主制は人権の保障を本質とする

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4 立憲主義の現代的意義
 (一)立憲主義と社会国家 立憲主義は、国家は国民生活にみだりにかいにゅうすべきではないという消極的な権力観を前提としている。そこで、国家による社会への積極的な介入を認める社会国家思想が、立憲主義と矛盾しないかが問題となる。しかし、立憲主義の本来の目的は、個人の権利・自由の保障にあるのであるから、その目的を現実の生活において実現しようとする社会国家の思想とは基本的に一致すると考えるべきである。この意味において、社会国家思想と(実質的)法治国家思想とは両立する。戦後ドイツで用いられてきた「社会的法治国家」という概念は、その趣旨である。
 (二)立憲主義と民主主義 また、立憲主義は民主主義とも密接に結びついている。すなわち、(1)国民が権力の支配から自由であるためには、国民自らが能動的に統治に参加するという民主制度を必要とするから、自由の確保は、国民の国政への積極的な参加が確立している体制においてはじめて現実のものとなり、(2)民主主義は、個人尊重の原理を基礎とするので、すべての国民の自由と平等が確保されてはじめて開花する、という関係にある。民主主義は、単に多数支配の政治を意味せず、実をともなった立憲民主主義でなければならないのである*。
 このような自由と民主の結合は、まさに、近代憲法の発展と進化を支配する原則であると言うことができよう。戦後の西欧型民主政国家が「民主的法治国家」とか「法治国家的民主政」と言われるのは、そのことを示している。
 *自由主義と民主主義 戦前の憲法学−−とくにワイマール憲法時代のドイツ−−では、自由主義を否定しても民主主義は成り立つという見解が有力であった。しかし、宮沢俊義が説いたとおり、「リベラルでない民主制は、民主制の否定であり、多かれ少なかれ独裁的性格を帯びる。民主制は人権の保障を本質とする」、と考えるのが正しい。
    −−芦部信喜高橋和之補訂)『憲法 第四版』岩波書店、2007年、16−17頁。

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