覚え書:「今週の本棚・新刊 『米朝置土産 一芸一談』=桂米團治・監修」、『毎日新聞』2016年4月10日(日)付。

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今週の本棚・新刊
米朝置土産 一芸一談』=桂米團治・監修

毎日新聞2016年4月10日 東京朝刊

 (淡交社・1620円)

 上方落語の復興に尽くした桂米朝が亡くなってはや1年が過ぎた。埋もれていた噺(はなし)を復活させ、研究し、書物にまとめ、さらに多くの音源や映像を残した。この1年、一門の弟子や孫弟子が高座などでさまざまな思い出を語るのを聞いてきたが、ある門人の「書物にして残しただけやなく、お客さんを笑わして残したのがすごい」という言葉が耳に残る。

 そんな米朝のすごさは、実は落語の語り手としての芸にとどまらないところにある。聴き手としての芸の神髄を味わわせてくれるのが本書だ。昭和の芸界で活躍した約50人と対談したラジオ番組を活字化して、1991年に出版された『一芸一談』に入りきらなかった対談を収めた。

 登場するのは朝比奈隆小沢昭一小松左京ら第一線で活躍した人たち。古典芸能に限らない、米朝の知識の深さと、旺盛な好奇心が軽妙な語り口を通じて、ひしひしと伝わる。

 なかでも、立川談志とは「緊張緩和」「与太郎論」など深いところに及ぶ。ともに落語を愛する落語家同士ならでは、やりとりは時にヒリヒリさせる。生きた言葉で語られた貴重な芸能史であると、つくづく感じるのだ。(元
    −−「今週の本棚・新刊 『米朝置土産 一芸一談』=桂米團治・監修」、『毎日新聞』2016年4月10日(日)付。

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