覚え書:「【書く人】本土の人は真実知って 『沖縄は「不正義」を問う』 琉球新報社論説副委員長・普久原均さん(51)」、『東京新聞』2016年04月24日(日)付。

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【書く人】

本土の人は真実知って 『沖縄は「不正義」を問う』 琉球新報社論説副委員長・普久原均さん(51)

2016年4月24日

 熊本地震の支援で、米軍は初めて、事故の危険が指摘される新型輸送機オスプレイを使った。「災害支援で実績をつくり、抵抗感を薄れさせる。そんな米軍と日本政府の思惑があると思う」と淡々と分析する。
 政府の言い分を垂れ流さず、徹底的に住民側に立つ論調で知られる沖縄の地元紙「琉球新報」。二〇一四〜一五年に掲載された社説を一冊にまとめた。
 「沖縄では常識でも、本土で知られていないことがあまりに多い。もどかしい」と話す。執筆した論説委員十一人を代表して「だからこそ、この本を本土のみなさんに読んでほしくて」と語る。
 基地問題が解決しない背景には沖縄県外での「無知」がある。この本を読むと、知っているようで知らなかった事実が次々と出てくる。
 作家の百田尚樹氏は米軍普天間飛行場を「もともと田んぼの中にあった。基地の周りに行けば商売になると人が住みだした」と語ったが、滑走路付近は戦前、宜野湾村役場があった集落の中心部だった。
 今回の高校教科書検定では、帝国書院の「新現代社会」が、米軍がいることで「地元経済がうるおっている」と記述。その後、「経済効果がある」と言い換えたが、沖縄経済の基地依存度はわずか5・4%(二〇一二年度)。むしろ返還後の跡地は商業地となって経済効果を上げており、基地は経済発展の阻害要因になっている。「なぜこれで検定を通るのか。沖縄は基地依存だと教科書で刷り込むのは、悪意としか思えない」
 普天間飛行場辺野古移設は「今の福島県原発を新設するようなもの」という。先日、移設をめぐる訴訟で、国側は和解を受け入れた。ところがわずか三日後、国は再び、移設を進めるための「是正指示」を沖縄県知事に出した。「和解は完全なポーズ。むしろ政府は戦闘態勢をより明確にしてきました」
 信号無視の米兵の車に中学生がひき殺されても「太陽がまぶしかった」と言えば無罪になる。ここは法治国家なのか。最低限の人権は−。そんな怒りと悲しみが、全体を通底している。
 安倍政権に逆らう者はすべて「反日」というかのような風潮が広がる今、沖縄の問題は、本土に住んでいるわたしたちを取り巻く社会の真の姿を見せる。「全国民が問われている」という言葉が突き刺さる。
 高文研・一七二八円。 (出田阿生)
    −−「【書く人】本土の人は真実知って 『沖縄は「不正義」を問う』 琉球新報社論説副委員長・普久原均さん(51)」、『東京新聞』2016年04月24日(日)付。

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沖縄は「不正義」を問う
琉球新報社論説委員会 編著
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