覚え書:「書評:ことばあそびの歴史 今野真二 著」、『東京新聞』2016年07月10日(日)付。

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ことばあそびの歴史 今野真二 著

2016年7月10日

いろは歌もいろいろ
[評者]千野帽子=エッセイスト
 本書は万葉集から明治まで、日本語のことばあそびの歴史をたどり、大量の実例を紹介している。たとえば、いろは四十七文字を一度ずつ使って七五調に収める「いろは歌」に、こんな膨大な作例があったとは知らなかった。各種実例を読んで気づいたが、「ん」を加えた四十八音が十二音(七五調)×四行(のちの都々逸と同じ行数)という収まりのいい構成となる。だから多く作られたのかもしれない。空海作という伝説のある有名ないろは歌「ん」がないので、二行目前半<わかよたれそ>が字足らずだ。
 本書がほんとうに特徴的なのは、言葉遊び一種類の実例群を紹介し終わるたびに、<こうなってくると、筆者もやってみないといけないだろう>と自ら新作を試みる果敢な姿勢にある。
 ところで、ことばあそびと聞くとまずダジャレが思い浮かぶ。本書で紹介される多様な作例も、掛詞(かけことば)や謎かけ、回文、折句、隠題(かくしだい)など、語音の側面に多く依存していた。とはいえ判じ絵に創作漢字、ご当地キャラウルトラ怪獣のネーミング、小説家・西尾維新の作品のキャラクター名など、字の見かけや語意を利用したものも広く紹介してくれる。
 なお、この評はスマートフォンの音声入力で下書きした。手直しをしていて、平成期のことばあそびが変換ミスに多く依存していることに気づいた。
  (河出ブックス ・ 1836円)
<こんの・しんじ> 1958年生まれ。清泉女子大教授。著書『日本語の考古学』など。
◆もう1冊 
 田中章夫著『日本語スケッチ帳』(岩波新書)。「お・も・て・な・し」から「風評被害」まで、日本語の今を追う。
    −−「書評:ことばあそびの歴史 今野真二 著」、『東京新聞』2016年07月10日(日)付。

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