覚え書:「オキナワから:米軍属事件 基地ある限り続く 元沖縄県知事・大田昌秀さん(90)」、『毎日新聞』2016年05月30日(月)付。

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オキナワから
米軍属事件 基地ある限り続く 元沖縄県知事大田昌秀さん(90)

毎日新聞2016年5月30日 東京夕刊

 元米海兵隊員の軍属が関与したとみられる死体遺棄事件をきっかけに、沖縄県民の間に反基地感情が改めて高まっている。怒りの矛先は米軍だけでなく、普天間飛行場の県内移設を進めようとする日本政府にも向かう。今、沖縄で何が起きているのか。緊急リレーインタビューの初回は、大田昌秀・元沖縄県知事(90)に聞いた。【聞き手・佐野格】

 −−今回の事件をどう受け止めていますか。

 ◆ニュースを聞いてすぐに「またか」と思った。(現職だった)1995年の米兵少女暴行事件を思い浮かべた。あの時は、8万5000人が集まった県民大会の壇上で秘書課が用意した紙を見ずに、「本来一番に守るべき幼い少女の尊厳を守れなかったことを心の底からおわびしたい」とわびた。

 今、怒りは沖縄中に広がっている。集められて抵抗しているわけではない。このままでは(米軍人が県民をはねた交通事故に端を発し、米軍車両の焼き打ちに発展した70年の)コザ騒動のように、いつか血を見るような事件が起きるのではないかと心配だ。

 −−米軍関係者による痛ましい事件が繰り返されています。原因はどこにありますか。

 ◆基地がある限り、防ぎようがない。基地を撤廃し、日米地位協定を変えるべきだ。日米両政府に何度も訴えてきた。地位協定主権国家としてこんなおかしなことはない。だが政府は全然手をつけず、「運用改善」で対応できるというが、日本復帰後も(米軍関係者による)500件以上の凶悪犯罪が起きている。協定を変えないと問題の根本的な解決にならない。

 −−沖縄の苦しみが本土に伝わっていない、という声を聞きます。

 ◆その通りだ。そうした不満が積もり積もって沖縄では日本離れが急速に進んでいる。政府は沖縄の新たな動きを軽く見ているのではないか。同じような事件が沖縄以外の国内で繰り返されれば、こんなものでは済まないはずだ。反米、反基地闘争が一斉に盛り上がる可能性がある。政府は沖縄を軍事戦略の前線、捨て石としか見ていない。沖縄を同胞として見ていない。(その意識は)明治時代以来変わっていない。(随時掲載)

 ■ことば

日米地位協定
 日米安全保障条約に基づき、在日米軍の法的地位や基地の管理、運用を定めた協定。米軍人や軍属が起こした公務中の事件、事故は米側に裁判権があると規定し、公務外でも米側が先に容疑者を拘束した場合、身柄は原則として起訴まで日本側に引き渡さない。協定は1960年の発効後、一度も改定されていない。
    −−「オキナワから:米軍属事件 基地ある限り続く 元沖縄県知事大田昌秀さん(90)」、『毎日新聞』2016年05月30日(月)付。

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http://mainichi.jp/articles/20160530/dde/041/040/028000c





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