覚え書:「ブックウオッチング:『婦人公論』 横山恵子・編集長」、『毎日新聞』2016年06月01日(木)付。

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ブックウオッチング
婦人公論』 横山恵子・編集長

毎日新聞2016年6月1日

 (中央公論新社・毎月2回第2、第4火曜日発行 6月14日号570円)

女性の立場で考え続け100周年
 今年1月、婦人公論は創刊100周年を迎えた。平塚らいてう田村俊子、波多野秋子に伊藤野枝。当初から多くの女性たちが関わった伝統ある言論誌。横山恵子編集長は「女性の気持ちを理解する。そのコンセプトは100年間変わっていません」と語る。【井上志津】

 「本誌は最も理解ある婦人の同情者であり 最も健全なる婦人の指導者であり 最も心易い相談相手であり 最も仲の好いお友達である」。1916年の中央公論1月号に掲載された婦人公論創刊号の広告だ。「女と共に両性問題を研究しようとする男」に購読を呼びかける記述もある。編集長は後に中央公論社社長になる嶋中雄作。28歳だった。

 「これを見た時、今に通じていて感動しました。女性に寄り添い、かつ雑誌としての幅の広さ、視点の多様さがある。女性と一緒に考えたい男の人に呼びかけているのもかっこいいですよね」と横山さん。98年に編集部に配属された時も「女性へのリスペクトを忘れないように」と言われたという。女性に事件が起きて話題になったら、「まずは女性の立場から考えてみる」。十八番の独占手記もこうして培われた信頼感から生まれたものに違いない。

 最近は自分でSNSに書く人が増え、独占手記を取るのは容易ではないそうだ。「でも大丈夫。婦人公論は本人の言いたいことをプロがきちんとした文章で書くので、読者にちゃんと伝わるメリットがあります」。原稿用紙8−12枚という長文の読者体験手記も婦人公論ならではだ。

 今の気分を「箱根駅伝で、たまたま100周年地点でタスキを渡されて上り坂を一生懸命走っている感じ」とたとえる。「ただ、女性がどんな生き方をしていても、出産とか更年期とか介護とか、ぶつかる壁は大正の頃から変わらない。だから、解決策を一緒に考える雑誌があるんだよということを一人でも多くの人に知ってもらう機会にしたいと思っています」

 そのために28日の伊藤比呂美さんと川上未映子さんのトークイベントをはじめ、記念イベントが目白押しだ。営業用のプロモーション動画もできた。「来年になったら一息つけるかな? ずっと上り坂のような気もしますが……」

 ★婦人公論6月14日号内容

 本誌独占! 瀬戸内寂聴×小保方晴子「『STAP細胞』騒動から2年 小保方さん、あなたは必ず甦ります」のほか、特集「ひとりになっても豊かな老後」「私の体の秘かな悩み」など。

 ■人物略歴

よこやま・けいこ
 1998年中央公論社(現・中央公論新社)入社。同年3月に月刊から月2回刊にリニューアルした婦人公論編集部に配属。特集や連載の担当を経て2009年に副編集長、14年4月より編集長。
    −−「ブックウオッチング:『婦人公論』 横山恵子・編集長」、『毎日新聞』2016年06月01日(木)付。

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