覚え書:「宗教と政治、うつろう関係 『生長の家』、参院選で与党支持せず」、『朝日新聞』2016年06月16日(木)付。

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宗教と政治、うつろう関係 「生長の家」、参院選で与党支持せず
2016年6月16日


エコロジー路線に転じた生長の家は「電力自給」を目指す。画面は、供給が需要を上回っていることを示している
 来月の参院選を前に、宗教法人生長の家」は与党とその候補者を支持しない方針を発表した。安保法制などに反対する姿は、1980年代前半までのナショナリズム路線とは大違いだ。なぜ宗教が政治に関わる姿勢を変えることがあるのだろうか。

 ■反左翼からエコ、様変わり

 山梨県北西部、八ケ岳山麓(さんろく)に広がる北杜(ほくと)市の山林の中に、生長の家の国内外の拠点を束ねる本部はある。3年前、本部機能を東京・原宿から移した。ログハウス風の施設のすべての屋根には、太陽光を利用した発電と集熱のパネル。宗教的理念に基づく独自のエコロジー路線を歩んでいる。

 元信徒らが、改憲運動を進める「日本会議」の中枢に――。そんな文脈で生長の家は注目されている。だが、教団はかつてとは様変わりだ。

 生長の家は30年に立教された新宗教で、国内の信徒数は公称52万人。創始者谷口雅春氏は戦後、「反左翼」の運動を進めて64年には生長の家政治連合(生政連)を結成した。「屈辱の現憲法を排し明治憲法復元の立場を明らかにしましょう」とスローガンに掲げた。だが、しだいに行き詰まり、83年に生政連の活動は停止する。「政治が前に出て宗教は後ろ、と主従が逆転してしまっていた。その弊害を反省し、宗教に専念していったのです」と広報担当者は振り返る。

 谷口雅宣(まさのぶ)現総裁は自著で、宗教は不変の「真理」という中心と「それを伝える手段・方法」である周縁の二層構造だとし、周縁は変わり得ると論じている。

 教団が9日に発表した方針では、時間をかけて歴史認識などの間違いを正し、「時代の変化や要請に応えながら」運動の方法を変えてきたと説明。「立憲主義を軽視」する安倍政権への反対を唱えた。

 ■戦争・現実主義…理由は様々

 宗教が政治的な路線を変える理由は様々だ。カトリック教会は「開かれた教会」をモットーとする第2バチカン公会議を62〜65年に開いたのが転機となった。二つの大戦で無力だった反省などを背景に、宗教間の和解や国家間の紛争・対立の仲介に積極的に関わるようになった。

 創価学会が支持する公明党は70年代、一時的ながら「日米安保の即時廃棄」を打ち出したこともある。やがて現実主義に傾き、99年には自自公連立政権に加わった。昨年の安保法制が成立するまでの過程でも、創価学会公明党を支えた。

 反対に、90年代まで自民党を中心に支援してきた立正佼成会は、自自公政権以降は自民党と距離を置き始める。来月の参院選比例区では民進党の2人を推薦する。

 宗教と政治の関わりを研究する国学院大学の塚田穂高助教はこう話す。「伝統宗教の場合でもその教えに基づき、戦争協力にも平和路線にも向かう。新宗教でも、時の指導層が創始者の世界観の一部をよりどころに以前とは別の路線を取る可能性は常にある」

 ただし、そのときに重要なのは「寛容さ」と「個の自律」だと指摘する。路線変更が内外の異論の排撃につながっていないかが問われるべきだという。「教団宗教の多くは停滞・縮小傾向にあり、一人ひとりの関わり方にも濃淡がある。教団が政治的方針を示し、無理に従わせようというのは時代錯誤的。社会の側も『宗教団体は一枚岩』といった固定的なイメージを問い直す必要がある」(磯村健太郎
    −−「宗教と政治、うつろう関係 『生長の家』、参院選で与党支持せず」、『朝日新聞』2016年06月16日(木)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12410836.html





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