覚え書:「怒ってみたら… 女性参政権から70年:3 自分のモヤモヤ、声に出そう」、『朝日新聞』2016年07月05日(火)付。

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怒ってみたら… 女性参政権から70年:3 自分のモヤモヤ、声に出そう
2016年7月5日

女性たちが感じている生きづらさは…
 ■我慢せず問題提起、「怒れる」女子会

 職場や家庭でモヤモヤすることがあるが、我慢するものだと思ってきた――。そんな女性らがまずは怒ったり、「怒ってみたら」と呼びかけたりする会がじわり広まっている。

 東京で活動する「ちゃぶ台返し女子アクション」。昨年夏から日頃の違和感や怒りを話し合うイベントを10回ほど開き、毎回10人前後が参加してきた。その締めが参加者一人ひとりのちゃぶ台返しだ。「人の役割を勝手に決めるなー!」などと怒りを吐き出し、段ボール製のちゃぶ台をひっくり返す。まずは声を上げる訓練を、との試みだ。

 自分を責めたり、我慢したりしてきたことの背景に、実は「女性らしさ」や性別役割分業を強いる社会構造があるのではないか。メンバーでNPO代表の鎌田華乃子さん(38)らのこの思いが活動のきっかけだ。声を出し合うことで社会のおかしな点を認識し、変えていく狙いだ。

 「子どもがいて働き続けている女性が私の職場にはいない」。参加者が不安を打ち明けると、話題は家庭での負担が女性に偏る現状に。「長い時間働くことだけ評価される」との意見も出て、男性を含む「働き方の問題」でもあると気づいてきた。

 そして「具体的に政策を変えるようなキャンペーンをしよう」となった。年明けからメンバー15人らが10〜50代の女性65人に「抱えている『生きづらさ』」をインタビューし、テーマを「女性の働き方と性暴力」に決めた。今後、政治家への要望活動などをしていく方針だ。

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 こうした怒りを表明する女性の会の先駆けとされるのが、「怒(いか)れる女子会」だ。神奈川県の弁護士太田啓子さん(40)が2014年に開催を呼びかけたのがきっかけだ。

 投票以外に政治に触れてこなかったが、3・11で変わった。原発事故後、当時3歳の長男の尿から微量のセシウムが検出された。まわりの親に伝えてもことごとく「スルー」。「何もしないのは『現状でいい』と同義なのに、『中立』と思い込んでいる人が多い」と危機感を感じた。

 そして、「オッサン政治」とされる多様性や人権に無配慮な政策について自由にしゃべる場を、と考えた。思いついたら誰でも開け、趣旨に賛同する男性も大歓迎。どんな政党や政策を支持してもいい。これまで数名から180人ほどの様々な規模で全国で100回以上開かれた。

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 この怒れる女子会に触発され、関西の女性らは14年暮れに新たな会を立ち上げた。ただ、主宰する同志社大院生の對馬(つしま)果莉さん(30)らは悩んだ。太田さんのような社会的な地位がない自分たちに、怒れる言葉も知識もないと思ったからだ。

 居酒屋とカフェをはしごして話し合い、会の名前を決めた。「怒りたい女子会 これあかんやつや」。誰に何を怒りたいのかわからない、モヤモヤの状態でいい。それを吐き出すことで、怒っていい「あかんやつや」と気づいていきたいと考えた。

 具体的な主張や目標は設けなかった。参加者をつなぎとめる仕組みもない。安心して話せるよう「人の話を遮らない」「否定しない」などのルールも作った。女性6人のメンバーで昨年4月からワークショップを2回開き、各20人ほどが語り合った。20代も50代も、男性もいた。

 「怒ると『更年期』などと言われ、怒っちゃいけない空気がある」。参加者から出るモヤモヤは政治とは一見関係が薄そうなものもあるが、對馬さんは「私たちは政治課題に気づく手前の、自分の気持ちに気づくことにこだわりたい」という。

 (田中陽子、長富由希子)
    −−「怒ってみたら… 女性参政権から70年:3 自分のモヤモヤ、声に出そう」、『朝日新聞』2016年07月05日(火)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12442439.html





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