覚え書:「文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊! [文]池澤春菜(声優・コラムニスト)」、『朝日新聞』2016年10月02日(日)付。
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文庫この新刊!
池澤春菜が薦める文庫この新刊!
[文]池澤春菜(声優・コラムニスト) [掲載]2016年10月02日
(1)『うそつきの娘(妖怪の子預かります2)』 廣嶋玲子著 創元推理文庫 799円
(2)『女帝の名のもとに ファースト・コンタクト』(上・下) マイケル・R・ヒックス著 中村仁美訳 ハヤカワ文庫SF 各972円
(3)『パルプ』 チャールズ・ブコウスキー著 柴田元幸訳 ちくま文庫 907円
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妖怪と江戸時代とユーモアミステリーは相性が良いのか、快作が多い。最近のお気に入りは軽さも深さも併せ持つ(1)。ひょんなことから妖怪の子預かり屋となった13歳の弥助。養い親である盲目の美青年・千弥(せんや)に、梅の妖怪、化け猫、あかなめ、華蛇(かだ)族の姫、と種々様々な妖怪たちに囲まれた賑(にぎ)やかな生活が楽しい。
ファースト・コンタクトの相手は、好戦的で礼儀正しい、牙とかぎ爪をはやした青い肌の女戦士だった。SF的王道設定の(2)、主人公の1人は日本人、でも設定は“とんでも”なのがポイント。出身は厳格な家父長制の惑星ナガノ、武器は祖父の形見の日本刀。シリアスなミリタリーSFなれど、ニヤリとしてしまう。
(3)は、優しくなければタフでもない、生きる価値もないかもしれない、とことん駄目な探偵の物語。タイトル通り、三流ハードボイルドを洒落(しゃれ)のめした設定ながら、“死の貴婦人”に宇宙人まで出てくるはちゃめちゃさ。肩の力を抜いて、デタラメっぷりを堪能。弱さも甘さも愛(いと)おしい小説。
−−「文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊! [文]池澤春菜(声優・コラムニスト)」、『朝日新聞』2016年10月02日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2016100200007.html